1. はじめに

(1)エグゼクティブ・サマリー

大和証券グループは、脱炭素社会の実現に向け、気候関連の情報開示を進めています。

本レポートにおいては、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が2023年6月に公表したIFRS S1号/S2号、及びSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が2025年3月に公表したサステナビリティ開示基準等を参考に、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」についての情報開示を行います。

ガバナンス
監督
  • 気候変動を含むサステナビリティに関する戦略及び方針については、取締役会が監督
  • 取締役会には、サステナビリティに深い知見を有する社内外取締役が在籍しており、
    サステナビリティに関する戦略及び方針について、取締役会規則に則り、
    経営の中核となる事項や取締役会が重要と認めた事項について決定
  • サステナビリティ課題への取組みに関する役員のインセンティブを強化するため、
    サステナビリティKPIを業績連動型報酬の評価体系に組み入れ
執行
  • サステナビリティ推進委員会:代表執行役社長CEOを委員長とし、気候変動に関する戦略及び方針について議論。
    また、執行役会での議論を経て、必要に応じて取締役会に報告
  • グループリスクマネジメント会議:代表執行役社長CEOを委員長とし、気候変動を含むリスク管理に係る方針や
    施策について議論。最高リスク管理責任者CROが出席
  • グループ横断的WG:大和証券各本部・主要グループ会社のサステナビリティ責任者のもとで、
    サステナビリティKPIのモニタリングやサステナビリティ関連ビジネスを推進
戦略
気候関連リスクと機会の認識
  • 気候関連リスクについては、気候変動シナリオに基づく分析を行い、
    事業に負の影響を与えると見込まれるリスク(移行/物理的)を整理。
    主な例としては、脱炭素社会への移行による投資・運用先の業績悪化に伴う収益悪化、
    保有資産の価値低下、当社グループの評判悪化等
  • 気候関連機会については、各事業部門にヒアリングの上、
    シナリオ分析を通じて把握した影響も加味しながら特定し、その重要性を評価。
    主な例としては、サステナビリティを意識した投資機会の増加、資金調達等の引受増加、
    新たな金融商品の提供機会の増加等
戦略的取組み
  • 本業として、サステナブルファイナンスや、ESGに配慮した不動産等のオルタナティブ資産の運用機会の提供、
    再生可能エネルギー分野への投資等の積極的な推進
  • カーボンニュートラル宣言のもとGHG排出量の削減や、ステークホルダーとのエンゲージメント強化、
    ルールメイキングへの積極的な関与等に取組む
シナリオ分析に基づくレジリエンス評価
  • エネルギー転換等が及ぼす負の影響は、相応のリスクが予想される一方で、
    新エネルギーの増加に伴う新たな事業機会という正の影響が混在し、全体としては中立と位置付け
リスク管理
リスク管理体制
  • 気候関連リスクについては、既存のリスク管理の枠組みのなかで考慮しており、
    リスクアペタイト・ステートメントにおいて、2021年度より気候変動リスクを取り上げ、効果的に管理を実施
  • 気候関連リスクが、トレーディング業務のポジションに与える影響の分析・評価については、
    NGFSの各シナリオをもとに短期化したシナリオを用いたストレステストを継続的に実施
環境・社会関連ポリシーフレームワーク
  • 環境・社会関連ポリシーフレームワークを策定し、国内外の動向を踏まえ定期的に改訂を実施
  • 気候変動へ影響する石炭火力発電事業、炭鉱採掘事業、石油・ガス開発事業等の、
    対象となる案件に対しては、ESGデュー・デリジェンスを実施し、投融資等の可否を判断
指標及び目標
サステナビリティKPI
  • 中期経営計画“Passion for the Best”2026の策定にあわせて、2024年度に、サステナビリティKPIを新たに設定・公表
  • 「GHG排出量(自社※1/投融資ポートフォリオ※2)」を含む、気候変動と関連性の高いKPIを設定
自社のGHG排出量※1
  • カーボンニュートラル宣言のもと、2030年度までのネットゼロを目指す
  • 2024年度は、大和証券及び大和総研の国内全拠点における使用電力の再エネ化と、
    継続的な省エネ対策を実施し、前年度比で約70%の削減を達成。目標達成に向けて順調に進捗
投融資ポートフォリオ排出量※2
  • カーボンニュートラル宣言のもと、2050年までのネットゼロを目指す
  • 最も大きな割合を占める電力セクターのプロジェクトファイナンスについて、
    2030年度までの中間目標を設定。2023年度は、投融資先の発電効率の向上及び
    再エネ投融資の進捗を受け、2022年度実績より減少
炭素関連資産
  • 脱炭素社会への移行に伴い、GHG排出量の大きい炭素関連資産については、
    将来的に価値が低下するリスクがあることから、継続的に計測を実施
  • 2024年度12月末時点での炭素関連資産の総額は、約5,500億円
  • ※1自社のGHG排出量はScope1+2の合計
  • ※2投融資ポートフォリオのGHG排出量の対象は、電力セクターへのプロジェクトファイナンス。一部推計値を含む

(2)2024年度ハイライト※1(グループKPI)

自社の
GHG排出量※2

2030年度目標※4
ネットゼロ
2,725t-CO2e

投融資ポートフォリオの
GHG排出量※3

2030年度中間目標※4
186~225g-CO2e/kWh
243g-CO2e/kWh

SDGs関連債
リーグテーブル※5

2026年度目標
2位以内
1
  • ※12025年3月末時点
  • ※2自社のGHG排出量はScope1+2の合計(マーケット基準)
  • ※32023年度実績
    投融資ポートフォリオ排出量の対象は、電力セクターのプロジェクトファイナンス一部推計値を含む
  • ※42030年度単年
  • ※5[集計対象] 発行体のサステナビリティ戦略における文脈に即し、環境・社会課題解決を目的として発行される普通社債、財投機関債、地方債、サムライ債 ※自社債除く
    [算定方法] LSEGデータ&アナリティクスのデータを基に大和証券作成

これまでの歩み

当社グループは、関連する各種イニシアティブに賛同し、気候関連の取組みを進めています。2018年に国内証券会社として初めてTCFD提言への賛同を表明し、それ以降、毎年、気候関連の情報開示を行っています。

2018
  • SDGs推進委員会(現サステナビリティ推進委員会)の設置
  • TCFD提言への賛同表明
2019
  • TCFDコンソーシアムに参加
  • 蘭Green Giraffeへの出資
2020
  • サステナブルファイナンスの専門チームの設置
  • SDGs担当(現サステナビリティ担当)設置
  • シナリオ分析結果を開示
2021
  • 経営ビジョン2030Visionの策定
  • 環境・社会関連ポリシーフレームワークの策定
  • カーボンニュートラル宣言の公表
  • PCAFへの加盟
  • IFRS財団の評議員に当社役職員が就任
2022
  • SSBJの委員に当社役職員が就任
2023
  • GX経済移行債の商品設計アドバイザーに選定
  • GXリーグへの参画
  • 投融資ポートフォリオのGHG排出量等(Scope3)に関する中間目標設定
  • 有価証券報告書にて気候変動の開示
2024
  • 中期経営計画“Passion for the Best”2026の策定
  • 経営ビジョン2030Visionのアップデート
  • 社内外取締役や執行役による、機関投資家等を対象とした“サステナビリティミーティング”の開催
  • 東京証券取引所が開設するカーボン・クレジット市場において、2年連続となるグッド・マーケットメイカー賞を受賞
  • 大和証券及び大和総研の国内全拠点の使用電力を再エネ化
  • 投融資ポートフォリオ排出量の対象範囲を高排出セクター以外も含める形に拡大
  • 物理的リスクの計測対象に再生可能エネルギー施設を追加