投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロに向けた対応
当社グループは、カーボンニュートラル社会の早期の実現に向け2021年8月に策定した「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」にて、「2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量等(Scope3)ネットゼロ」というゴールを掲げています。このゴールに向けた具体的な道筋を明確化するために、排出量の計測およびセクター毎に2030年度までの中間目標の設定を行います。
今回はまず、高排出セクターを中心にPCAF基準に基づいて計測を実施しました。また、当社グループの投融資ポートフォリオの排出量につき、現時点で最も大きな割合を占める電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける目標値を設定しました。
(1)2022年度実績値の計測
計測範囲
2022年度の排出量については、高排出セクターを中心に下記10セクター・PCAFにて算定対象となっているアセットクラスを対象として計測を実施しました。
- セクター
電力(発電)、運輸、不動産、自動車製造、石炭、石油・ガス、鉄鋼、セメント、農業、アルミニウム - アセットクラス
上場株式、非上場株式、社債、商業用不動産、コーポレートローン、プロジェクトファイナンス- ※対象は、大和証券グループ本社の出資先・AM部門の運用先(自己保有分。ファンド経由の非上場株式除く)・大和ネクスト銀行の運用先におけるScope1・2
- ※商業用不動産・コーポレートローンは該当無し。また、その他のアセットクラスにおいて、対象が無い場合はハイフンを、端数処理で切り捨てとなる場合は0を表示
- ※一部、PCAFのデータベースに基づく推計値を使用(但し、同データベースにおいても参照できない対象は除外)
計測結果
上場株式 REIT含む |
非上場株式 REIT含む |
社債 | プロジェクト ファイナンス |
合計 | |
---|---|---|---|---|---|
電力(発電) | 33,113 | 0 | 28,420 | 409,667 | 471,200 |
運輸 | 28,629 | 0 | 0 | - | 28,629 |
不動産 | 12,400 | 5,539 | 0 | - | 17,939 |
自動車製造 | 701 | - | 1,925 | - | 2,626 |
石炭 | 67 | - | - | - | 67 |
石油・ガス | 61 | - | 0 | - | 62 |
鉄鋼 | 4 | - | 0 | - | 4 |
セメント | 1 | - | - | - | 1 |
農業 | 1 | - | 0 | - | 1 |
アルミニウム | 0 | - | - | - | 0 |
合計 | 74,978 | 5,539 | 30,344 | 409,667 | 520,529 |
(2)中間目標の設定
今回はまず、当社グループの投融資ポートフォリオの排出量の中で、現時点で最も大きな割合を占める電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける目標値を設定しました。今後も優先度の高いセクターから順次、目標設定を検討していきます。
電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける排出量
- ※対象排出量はScope1
2022年度実績値※1 | |
---|---|
総排出量 | 409,667 t-CO2 |
排出原単位(g-CO2/kWh) | 379 g-CO2/kWh |
PCAFスコア | 平均PCAFスコア 2.73 |
2030年度中間目標値 | |
指標 | 排出原単位(g-CO2/kWh) |
目標値 | 186~255 g-CO2/kWh |
参照シナリオ | IEA NZE・APS |
- ※1一部推計値を含む
(3)目標設定における考え方
セクター・アセットクラス
以下の理由より、まずは電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける排出量について、2030年度までの中間目標の設定を行います。
- 1.電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける総排出量は、当社グループの投融資ポートフォリオ排出量のうち、現時点で最も大きな割合を占めていること。
- 2.電力セクターは、日本の産業の総排出量の約40%を占めるセクターであること。また、産業全体が脱炭素化に向けて進む中で需要の増加が見込まれるセクターであること。
- 3.電力セクターにおいては、GHG 排出実績の開示や、2050年ネットゼロに向けた移行経路、各種国際的なガイダンスの整備が進んでいること。
指標
増加する電力需要を支えつつ、クリーンエネルギー化を同時に進めていく必要があるため、GHGの排出効率を示す排出原単位(発電量当たりの排出量)を計測指標とします。
絶対排出量を目標の指標として設定した場合、排出係数の低い発電事業の成長・拡大に対する資金の流れを妨げる可能性があること等を考慮しています。
2030年度目標値
パリ協定の目標である、2℃目標を十分に下回り、1.5℃目標と整合的である水準として、IEAのNZEシナリオ、APSシナリオに基づき、レンジでの削減目標を設定しています。
投融資先とのエンゲージメントを踏まえつつ、既存の投融資の見通しや想定されるトランジションのシナリオ等も踏まえて設定しています。また、各自治体のGHG削減目標や再生可能エネルギーの導入余地等も考慮に入れています。
(4)目標達成に向けた取組み
2030年度の中間目標値、および2050年のネットゼロ達成に向けて、電力セクターでは投融資先とのエンゲージメントの強化や、再生可能エネルギー向けファイナンスを実施します。
エンゲージメントの強化
-トランジション戦略の支援-
計測対象の電力セクターのプロジェクトファイナンスにおいて排出量が最も大きい事業は、北海道にある石炭火力発電事業です。このプロジェクトは石炭の地産地消による地域活性化や安定電源の確保への期待からスタートしました。北海道の広大・積雪寒冷という厳しい自然条件下にあっても火力発電所であれば天候条件等の制約に左右されないベース電源として、24時間365日安定して発電することが可能なため、安定的な電力供給にもつながっています。また、既に当該石炭火力発電所は、バイオマス燃料を混焼しているため、他の国内石炭専焼の火力発電設備に比べて発電量当たりのGHG排出量が限定的です。今後は気候変動への更なる対応強化の観点から、当社グループは定期的なエンゲージメントを実施し、以下のトランジション戦略の立案・実現に向けたサポートをしていきます。
具体的なトランジション戦略
- バイオマス混焼の拡大
現在3割程度のバイオマスの混焼を実施しており、今後は2030年度までに5割以上の混焼を目指します。将来的には追加の設備投資等をすることで専焼化を検討していきます。燃料として使用する木質ペレット・PKSの持続可能性(合法性)の確保については、資源エネルギー庁の定める事業計画策定ガイドラインに基づき自主的な取組みをしてまいりました。今後混焼率を拡大していく中でも、環境・社会的な責任に配慮した燃料調達を行います。 - CCUSの活用
地元企業が進めている石炭採掘跡を活用したCCUSに関する研究開発・実証実験と連携することで、2030年度までのカーボンリサイクル事業開始を目指します。国の実証結果や政策・制度等も踏まえて、その後の事業拡大も検討します。
再生可能エネルギー向けファイナンスの実施
当社グループの大和エナジー・インフラ株式会社は、太陽光・バイオマス・風力発電所などの再生可能エネルギー分野への投融資を通じて、新たなエネルギーシステムの構築による社会課題の解決を目指しています。
国内事業者への投融資だけでなく、同分野で先行する欧州の有力企業との資本業務提携も行っており、今後もエネルギー源の多様化の実現及び環境負荷の低減に貢献していきます。