投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロに向けた対応

当社グループは、カーボンニュートラル社会の早期の実現に向け2021年8月に策定した「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」にて、「2050年までの投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量等(Scope3)ネットゼロ」というゴールを掲げています。このゴールに向けた具体的な道筋を明確化するために、2023年度には排出量の計測および電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける2030年度までの中間目標の設定を行いました。中間目標に加えて、PCAF基準に基づいて計測した実績値、および目標達成に向けた取り組みは下記のとおりです。

(1)2023年度実績値の計測

計測範囲

2023年度の計測では、従前に比べて対象範囲を拡大させました。セクターについては高排出セクターに限定しない形で計測を行いました。また、投融資先の排出量については、Scope1・2の合計だけでなく、Scope3も含めた排出量も計測しました。

  • セクター
    全セクター
  • アセットクラス
    上場株式、非上場株式、社債、商業用不動産、コーポレートローン、プロジェクトファイナンス
    • 対象は、大和証券グループ本社の出資先・AM部門の運用先(自己保有分。ファンド経由の非上場株式除く)・大和ネクスト銀行の運用先
    • 商業用不動産・コーポレートローンは該当無し。また、その他のアセットクラスにおいて、対象が無い場合はハイフンを、端数処理で切り捨てとなる場合は0を表示
    • 一部、PCAFのデータベースに基づく推計値を使用(但し、同データベースにおいても参照できない対象は除外)

計測結果

今年度は計測対象セクターを全セクターに拡大しましたが、依然として、電力セクターのプロジェクトファイナンスが、当社グループの投融資ポートフォリオの排出量の中で最も大きな割合を占める排出量でした。

単位
t-CO2
  Scope
1・2
Scope
3
上場株式
REIT含む
非上場株式
REIT含む
社債 プロジェクト
ファイナンス
電力(発電) 56,675 0 166,683 397,634 620,993 175,009
運輸 (航空) 40,091 - - - 40,091 8,642
(海運) 429 - - - 429 536
(陸運) 105 0 0 - 105 42
金属、鉱業※1 1,984 14,426 - - 16,410 14,332
化学品 239 2,507 0 - 2,746 4,746
不動産 1,204 397 10 - 1,611 2,924
自動車製造 37 - 656 - 692 13,149
包装食品、肉 532 - - - 532 898
紙、林産物 332 - - - 332 293
石油・ガス 267 - 0 - 267 678
資本財※2 152 - 0 - 152 18,030
石炭 57 - - - 57 27
鉄鋼 45 - 0 - 45 35
アルミニウム 24 - - - 24 85
農業 22 - - - 22 11
建材 11 - - - 11 2
飲料 3 - 0 - 3 19
セメント - - - - - -
その他 3,426 45 183 - 3,654 24,003
合計 105,638 17,374 167,532 397,634 688,178 263,461
  • ※1鉄鋼・アルミニウム以外
  • ※2建物等

(2)中間目標に向けた進捗

当社は2023年度に、当社グループの投融資ポートフォリオの排出量の中で、現時点で最も大きな割合を占める電力セクターのプロジェクトファイナンスについて、2030年度までの中間目標を設定しました。2023年度実績は、投融資先の発電効率の向上及び再エネ投融資の進捗を受け、2022年度実績より減少しました。

なお、投融資ポートフォリオの排出量の計測は未だ開発段階にあります。そのため、計測結果は推計方法の見直し等により、大きく影響を受ける可能性があります。

  • 2022年度実績は379 g-CO2/kWh

電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける排出量

  • 対象排出量はScope1
2023年度実績値※1
総排出量 387,431 t-CO2
排出原単位(発電量当たり) 243 g-CO2/kWh
PCAFスコア 平均 2.73
2030年度中間目標値
指標 排出原単位(g-CO2/kWh)
目標値 186~255 g-CO2/kWh
参照シナリオ IEA NZE・APS
  • ※1一部推計値を含め計算

目標設定における考え方

セクター・アセットクラス

以下の理由より、まずは電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける排出量について、2030年度までの中間目標の設定を行います。

  1. 1.電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける総排出量は、当社グループの投融資ポートフォリオ排出量のうち、現時点で最も大きな割合を占めていること。
  2. 2.電力セクターは、日本の産業の総排出量の約40%を占めるセクターであること。また、産業全体が脱炭素化に向けて進む中で需要の増加が見込まれるセクターであること。
  3. 3.電力セクターにおいては、GHG排出実績の開示や、2050年ネットゼロに向けた移行経路、各種国際的なガイダンスの整備が進んでいること。

指標

増加する電力需要を支えつつ、クリーンエネルギー化を同時に進めていく必要があるため、GHGの排出効率を示す排出原単位(発電量当たり)を計測指標とします。

絶対排出量を目標の指標として設定した場合、排出係数の低い発電事業の成長・拡大に対する資金の流れを妨げる可能性があること等を考慮しています。

2030年度目標値

パリ協定の目標である、2°C目標を十分に下回り、1.5°C目標と整合的である水準として、IEAのNZEシナリオ、APSシナリオに基づき、レンジでの削減目標を設定しています。

投融資先とのエンゲージメントを踏まえつつ、既存の投融資の見通しや想定されるトランジションのシナリオ等も踏まえて設定しています。また、各自治体のGHG削減目標や再生可能エネルギーの導入余地等も考慮に入れています。

(3)目標達成に向けた取組み

2030年度の中間目標値、および2050年のネットゼロ達成に向けて、電力セクターでは投融資先とのエンゲージメントの強化や、再生可能エネルギー向けファイナンスを実施します。

エンゲージメントの強化 
-トランジション戦略の支援-

計測対象の電力セクターのプロジェクトファイナンスにおいて排出量が最も大きい事業は、北海道にある石炭火力発電事業です。このプロジェクトは石炭の地産地消による地域活性化や安定電源の確保への期待からスタートしました。北海道の広大・積雪寒冷という厳しい自然条件下にあっても火力発電所であれば天候条件等の制約に左右されないベース電源として、24時間365日安定して発電することが可能なため、安定的な電力供給にもつながっています。また、既に当該石炭火力発電所は、バイオマス燃料を混焼しているため、他の国内石炭専焼の火力発電設備に比べて発電量当たりのGHG排出量が限定的です。今後は気候変動への更なる対応強化の観点から、当社グループは定期的なエンゲージメントを実施し、以下のトランジション戦略の立案・実現に向けたサポートをしていきます。

具体的なトランジション戦略

  • バイオマス混焼の拡大
    現在3割程度のバイオマスの混焼を実施しており、今後は2030年度までに5割以上の混焼を目指します。将来的には追加の設備投資等をすることで専焼化を検討していきます。燃料として使用する木質ペレット・PKSの持続可能性(合法性)の確保については、資源エネルギー庁の定める事業計画策定ガイドラインに基づき自主的な取組みをしてまいりました。今後混焼率を拡大していく中でも、環境・社会的な責任に配慮した燃料調達を行います。
  • CCUSの活用
    地元企業が進めている石炭採掘跡を活用したCCUSに関する研究開発・実証実験と連携することで、2030年度までのカーボンリサイクル事業開始を目指します。国の実証結果や政策・制度等も踏まえて、その後の事業拡大も検討します。

再生可能エネルギー向けファイナンスの実施

当社グループの大和エナジー・インフラ株式会社は、太陽光・バイオマス・風力発電所などの再生可能エネルギー分野への投融資を通じて、新たなエネルギーシステムの構築による社会課題の解決を目指しています。

国内事業者への投融資だけでなく、同分野で先行する欧州の有力企業との資本業務提携も行っており、今後もエネルギー源の多様化の実現及び環境負荷の低減に貢献していきます。