サステナビリティを起点としたビジネス展開
大和証券グループは、創業以来大切にしてきた証券ビジネスをコアとしながらも、社会課題解決型の成長への投資として、当社グループが培ってきたさまざまな証券・金融ビジネスのノウハウを活かしたビシネスを、FinTech、ヘルスケア、エネルギー・インフラ、農業などの多様な分野でスタートさせました。
Fintertech株式会社
次世代金融サービスの創出
2018年4月に設立したFintertechでは、最先端のテクノロジーの活用や外部企業との連携により、次世代金融サービスを機動的かつ柔軟に創出することを目指しています。
国内では担保として取り扱われてこなかった暗号資産を対象とした「デジタルアセット担保ローン」、暗号資産を貸し出すことにより貸借料を受け取ることができる「デジタルアセットステーク(消費貸借)」、厳選された投資機会を提供する貸付型クラウドファンディング「Funvest」、独自の投げ銭サイトを簡単に作成できるクラウド型応援金サービス「KASSAI」、投資用不動産物件を対象とした「不動産投資プライムローン」を展開しています。
大和エナジー・インフラ株式会社
エネルギーへの投融資推進
大和エナジー・インフラは、大和PIパートナーズのエネルギー投資部門を前身として発足し、2018年10月1日より営業を開始しています。
再生可能エネルギー、インフラストラクチャーおよび資源分野への投融資を通じて、ハイブリッド型総合証券グループの一員として「新たな価値」の提供とSDGsへの貢献を目指します。
再生可能エネルギー発電プロジェクト
大和エナジー・インフラでは、大和証券グループのネットワークを活用し、再生可能エネルギー発電プロジェクトの開発・事業投資に積極的に取り組んでいます。太陽光発電分野では、2024年5月現在、保有し完工済みの8件すべてが安定稼働しております。
バイオマス発電分野では、資本業務提携先であるグリーン・サーマル株式会社とともに、国内の未利用材を主な燃料とする木質バイオマス発電所の開発を順次進めています。2018年1月より山形県米沢市において提携事業1号案件となる発電所の商業運転を開始させ、2号案件として和歌山県上富田町の発電所は2020年6月に商業運転を開始しました。3号案件の山梨県甲斐市の発電所は2023年に完工しております。
大和エナジー・インフラが開発・投資を行なった発電所
太陽光発電所 | バイオマス発電所 | |
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出力 | 稼働中:約115MW(8件合計) | 稼働中:約20MW(3件合計) |
合計 | 約115MW | 約20MW |
年間想定発電電力量
|
約28,000世帯分に相当 | 約25,000世帯分に相当 |
木質バイオマス発電分野への取組み
大和エナジー・インフラは、木質バイオマス発電所の開発・運営にかかわるリーディングカンパニーであるグリーン・サーマル株式会社およびバイオマス燃料供給業者であるバイオマス・フューエル株式会社と資本業務提携し、発電所建設のみならず燃料供給も含めたバイオマス関連事業を推進しています。
また、バイオマス・フューエル株式会社とともに、主に東南アジアにおいてバイオマス発電の燃料となるPKS(パーム椰子殻)の調達拡充や木質ペレットの製造工場の開発における協働を行っております。
木質バイオマス発電は、二酸化炭素の増減に影響を与えないカーボンニュートラルな発電設備であることに加え、放置・廃棄されてきた林地残材やPKSに燃料としての新たな価値を付加するため、新たな産業・雇用等の創出が期待され、国内の地方経済のみならず開発途上国の産業振興にも貢献することが見込まれます。
太陽光私募コアファンド
大和エナジー・インフラは、ブラウンフィールドの国内太陽光発電事業に対する投資手段として「DSREF コア・アマテラス投資事業有限責任組合」(以下「アマテラス」)を提供しています。このファンドは元々、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントが組成したもので、アマテラスに対し大和エナジーが投資する安定稼働中の太陽光発電所を順次拠出しています。
大和エナジー・インフラの投融資機能と大和リアル・エステート・アセット・マネジメントのインフラアセット・マネジメント機能を組み合わせることで、再生可能エネルギー分野のキャピタル・リサイクリングモデルを進展させます。当社グループは、オルタナティブ資産への投資家のニーズを満たすため、これらの取り組みを今後も続けます。
大和フード&アグリ株式会社
サステナブルな農業生産事業の推進
日本の農業ビジネスは、農業従事者の高齢化と就農者数の減少、後継者不足、さらに耕作放棄地の増加等、さまざまな社会課題を有しています。2018年11月に設立された大和フード&アグリは、リスクマネーの提供を通じて、農業生産ビジネスの大規模化・高効率化、新たな事業の取組みなど、日本の農業や食に関するビジネスが抱えるさまざまな課題解決に貢献していきます。
大規模園芸施設による農業生産の取組み
大和フード&アグリでは、大規模園芸施設を利用したトマトおよびパプリカの生産・販売ビジネスを行っています。さらに、2024年3月からパプリカの生産拠点を北海道にも拡大し、日本では珍しい自社グループによるパプリカの通年供給体制の構築を進めています。
今後も大規模園芸施設を利用した栽培およびその運営ノウハウを活かし、農業生産における大規模化や効率化を追求することで、国内外の食料安定供給、地方経済の活性化に貢献するビジネスに取り組んでいきます。
グッドタイムリビング株式会社
超高齢社会の日本において良質な介護サービスの確保は対処すべき重要な社会課題です。グッドタイムリビングではネットワーク通信を活用した効率化により、スタッフが専門性を発揮する環境を整え、介護サービスの質向上に取り組むとともに、広幅化する高齢者のニーズに応える体制強化を進めています。
質の高い介護サービスの提供
グッドタイムリビングでは、ネットワーク通信を利用し介護現場で情報や知識を共有することで、コミュニケーションを重要視したサービスの質向上および間接業務の省力化に取り組んでいます。ご入居者の健康や生活に関する記録は、従来の用紙からモバイル端末に変更しタイムリーに入力。情報を多職種で連携することで環境整備やケア内容の見直しなど、お一人おひとりに合わせたサービス提供に役立てています。また現在は、ビジネスチャットツール「LINE WORKS」の全拠点導入が完了し、スタッフ間のコミュニケーション強化により、ご入居者へのよりきめ細かな対応につなげています。
また今後は介護・医療双方のニーズを有する要介護高齢者の急増が想定されることから、2023年度より、同社が運営する有料老人ホームに訪問看護ステーションを新規開設(併設)しています。2024 年5月には「GTLナーシングサービス 新百合ヶ丘」(神奈川県川崎市)、「GTLナーシングサービス 千里ひなたが丘」(大阪府吹田市)、「GTLナーシングサービス 宝塚逆瀬川」(兵庫県宝塚市)を開設し、現在、首都圏・関西圏で計5事業所を運営しています。いずれも看護師が24時間常駐またはオンコール対応により訪問看護を提供することで、常時医療的ケアを必要とされる方にも安心してお暮らしいただける環境が整いました。
同社は一層進む高齢化の中で、介護現場のさらなる効率化とスタッフが専門性を発揮できる環境整備を進めるとともに、ご入居者や各拠点の地域の皆さまのニーズにお応えできるよう体制強化を進めていきます。
ICT活用具体例
口頭や文書で行われていた申し送り、スタッフ間の情報伝達をデジタル化。迅速かつ確実に情報が行き渡るだけでなく、介護スタッフや看護師など職種を超えた活発なコミュニケーションが図られるようになりました。また、ご入居者ごとのケアのポイントといったさまざまなナレッジも蓄積・多職種間で共有することで、よりきめ細やかなサービス提供につなげています。
リハビリテーションプログラムの効果測定に、身体機能分析AIサービス「CareWiz トルト」を活用しています。
5メートルほどの距離を歩く様子を撮影すると約2分で動画を分析し、歩行状態を速度、リズム、ふらつき、左右差の4つの指標で点数化。測定結果は1枚のシートで出力され、ご入居者やご家族への具体的かつタイムリーなフィードバックが可能になりました。
ご入居者、スタッフの声
- 具体的で分かりやすく、前回の結果とも比較しやすい。(ご入居者)
- 思ったよりまっすぐ歩けていたことが分かり、驚きました。(ご入居者)
- 杖の有無でトルトによる分析を行った結果、杖を使用した歩行の方が安定していることが分かり、よりその方にあったケアの提供につながりました。(介護スタッフ)
ベッドマットレスの下に体動センサーを敷き、ベッド上のご入居者の体動(寝返り、心拍、呼吸など)を検出。モバイル端末等で、ご入居者の状態(測定結果)を把握できる環境を整える取り組みを開始しました。
スタッフの労務軽減だけでなく、測定結果からご入居者の体調変化を意識・把握することで、ご入居者へのより良いサービス提供につなげることを目標としています。
介護記録システムには、従来は介護スタッフが手書きしていた、ご入居者の健康や生活に関するデータを入力。体温や血圧といったバイタルデータの経過グラフが自動作成されるほか、記録の検索性も向上し間接業務の省力化を実現しました。
スタッフの声
- ほかのスタッフのケアを見る機会が少ない中で、良いケアのポイントを、記録を見て知ることができました。
- 記録にかかる時間が短縮され、ご入居者と会話をする時間が増えました。
本ポータルサイトには「請求情報」「領収情報」のほか、従来は館内掲示および個別配布・郵送を行っていた各種お知らせや危機管理情報を掲載。円滑な情報伝達によるご入居者・ご家族の利便性向上とともに、1拠点(80室規模の場合)月当り平均400時間の事務作業の削減が見込まれます。
またスタッフが撮影した日常の写真をご入居者本人のご家族だけに公開する「写真館」サービスを新たに追加。イベント時だけではない何気ない普段の様子をお届けすることができ、ご家族の安心感の醸成につながっています。
- ※「写真館」サービスについて、一部拠点では、今後のサービス開始を予定しています。
ご家族の声(「写真館」サービス)
- なかなか面会に行けないので、写真で様子が分かり安心です。
- スタッフの方たちと楽しく過ごしている姿が見られて感激しています。
大和企業投資株式会社
次世代産業・サービスの創出
大和証券グループのベンチャーキャピタルである大和企業投資は、ベンチャー企業への投資を通じて社会課題の解決を進め、サステナブルな社会の実現に貢献しています。
大和企業投資はベンチャー企業に投資するベンチャーファンドを複数運営しています。この中には、バイオテクノロジーに特化したファンド、中国の環境企業と共同で運用する環境ファンドなど、SDGsとの関連性が非常に強いファンドがあります。
他のファンドにおいても、投資先の選定、投資後の経営サポートなどにおいて、SDGsの視点を意識して投資活動を行なっています。特に近年は社会課題解決を強く意識した起業家が増えていることもあり、大和企業投資の活動は年々SDGsとの関連性を強化しています。
社会課題解決型ベンチャーへの投資(2023年度)
大和企業投資は、多くのベンチャー企業に投資しています。その中には下記のように、SDGsに関連する企業も数多く含まれています。
- 日本ハイドロパウテック(DVGF2):独自の加水分解技術を活用した食品加工事業
- TopoLogic(DVGF2):トポロジカル物質を使ったMRAM及び熱流センサ開発
中節能環境ファンド
2020年10月、大和企業投資は、中国の中央国有企業として唯一の環境専門企業である中節能集団と共同で、中国の環境関連企業へ投資するファンドを湖北省武漢市に設立しました。当ファンドは、SDGsへの貢献を目指すとともに、中国政府が掲げる長江保護政策の理念にもとづいて投資事業を展開しています。2022年には、中国の中央政府(財政部、国家環境部)と上海市政府が共同で設立した「中国国家グリーン発展ファンド」からの出資も受け、現在のファンド運用総額は約72億円に達しています(2024年5月末)。中国の省エネ・環境・循環型経済・新エネルギー・新材料・設備製造等の分野の優良企業を主な投資対象としており、2023年度に以下の企業に投資しています。
- 重慶国際複合材料股份有限公司(重慶市):ガラス繊維(軽量化素材)の製造
- 岳陽興長石化股份有限公司(湖南省岳陽市):石油化学製品(省エネ燃料添加剤、汚染物質吸着剤原料等)の製造
同時に、これまでに投資した太陽電池セル、電池材料、排水管検査等の分野の企業に対する投資後のサポートも継続しています。これらの企業への投資支援活動を通じて、SDGsの17のゴールのうち、目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」などへの具体的な寄与を目指しています。
DCIパートナーズにおける創薬ベンチャーなどへの投資
DCIパートナーズは、NIF(現 大和企業投資)時代を通じ、20年以上バイオ分野への投資を行なうベンチャーキャピタルです。現在、バイオベンチャー特化型ファンドとしては国内最大級のファンドを2本運用しており、日本と台湾で投資を行なっています。既存のバイオベンチャー投資に加え、製薬会社やアカデミアに多数存在する有望な医薬候補品まで投資対象を拡大し、ファンド主導で会社を設立し、創薬ビジネスを推進することもあります。人材やノウハウ、ファンドの資金力を活かし、ファンドを通じて、経営資源を投入し、戦略立案から実行に至るまで、ハンズオンを超える開発促進に尽力しています。近年ますますベンチャーキャピタルを含めた産学官による創薬エコシステムの構築が活発化しています。また、当社も採択された認定ベンチャーキャピタルと連携して実用化開発支援する事業に約3,500億円もの予算が充てられた他、政府系機関等による成長資金も投入されるなど、国をあげた創薬力の強化やドラッグラグ・ロス解消などの課題に対する取り組みが加速しており、ますますこの分野の盛り上がりが期待されます。近年新薬の大半はバイオベンチャーが開発しており、我々は投資活動を通じてこれらの企業を支援し、産業と技術革新の基盤づくり、すべての人の健康ならびに社会に貢献できるよう努めます。
日台バイオファンド
DCIパートナーズは、日本と台湾の創薬分野を中心としたバイオベンチャーへ投資を行なうベンチャーキャピタルです。日本最大級のバイオベンチャー特化型投資ファンドを運用しています。2015年1月に設立した総額116億円の1号ファンドに加え、2020年12月に設立した総額153億円の2号ファンドがあります。
DCIパートナーズの投資先(一部)
- ノイルイミューン・バイオテック(2023/6月 東証グロース市場 上場):独自の基盤技術を用いた固形がんをはじめとするCAR-T療法の開発
- ケイファーマ(2023/10月 東証グロース市場 上場):iPS創薬と再生医療の2本柱で治療薬、治療製品を開発
東日本大震災中小企業復興支援ファンド
大和企業投資では、独立行政法人中小企業基盤整備機構、青森銀行、岩手銀行、七十七銀行および東邦銀行などからの出資を受け、「東日本大震災中小企業復興支援投資事業有限責任組合」を運営しています。この投資ファンドは、被災地域の未上場企業に対する機動的なリスクマネーの供給を通じて、被災からの復旧・復興、新事業展開、転業、事業の再編、継承、または起業によって新たな成長・発展を目指す企業を積極的に支援することにより、より早期の被災地域の復興と持続的発展に貢献することを目的としています。
大和ACAヘルスケア株式会社
大和ACA事業承継ファンド
アジアにおける市場発展支援の取り組み
大和総研は、2010年頃より、ASEANや国際協力機構(JICA)等が実施するアジア各国の資本市場発展支援プロジェクトや調査プロジェクトに積極的に取り組み、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、モンゴル等の持続性のある経済成長、グローバルパートナーシップの強化に貢献してきました。
特に、日越政府間合意に基づいて2019年から始まったJICAの「ベトナム株式市場の公正性及び透明性改善に向けた能力向上プロジェクト」は、両国政府、市場関係者から高い評価を獲得し、日越国交50周年の事業としても多くのメディアに紹介されました。2024年4月からはさらなる発展に向けた後継プロジェクトが3年間の予定で大和総研の受託により開始されています。