自然資本・生物多様性への対応 ~TNFDフレームワークに基づく開示~
大和証券グループでは、自然資本・生物多様性への対応を重要課題の1つと認識しており、2022年9月には「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」への賛同を表明しています。
2023年度、自然資本関連情報の開示に向けた分析を開始しており、今後開示情報の充実化を図っていきます。
大和証券グループが考える自然資本・生物多様性
2022年12月に生物多様性条約第15回締結国会議(COP15)が開催され、生物多様性の保全に向けた取組みを推進する国際的な議論が加速しています。当社グループの事業活動を含む、社会・経済における企業活動においても、自然資本に大きく依存するとともに、それらに対して影響も与えていることから、自然資本や生物多様性の毀損は、当社グループにとっても少なからずリスクであると私たちは認識しています。同時に、資金循環を通じてネイチャーポジティブに貢献できると考えています。
当社グループは2021年5月、当社グループの目指すべき姿を経営ビジョン「2030Vision」として策定し、2024年には外部環境の変化等を踏まえたレビューを行いました。
「2030Vision」では「グリーン&ソーシャル」をマテリアリティの一つと位置付け、持続可能な社会の実現に向けたサステナブルファイナンスを促進しています。また、当社グループが掲げる「環境ビジョン・環境理念・環境基本方針」においても、資源循環や生物多様性の重要性を謳っています。
2022年9月には大和アセットマネジメントとともにTNFD※フォーラムへ参画し、2023年12月には同社とともにTNFD Adopterへ登録しました。
当社グループは自然資本の回復に向けて取り組むとともに、持続可能な社会の実現に向けたサステナブルファイナンスの促進等により、金融・資本市場を通じ、豊かな未来を創造すべく努めていきます。
- ※TNFD:国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)、国連開発計画(UNDP)、世界自然保護基金(WWF)、及びGlobal Canopyにより2021年6月に正式に発足した、自然関連の財務情報を開示する枠組みの開発・提供を目指す国際イニシアティブ。TNFDフォーラムは、TNFDの議論をサポートするステークホルダー組織
LEAPアプローチによる分析
当社グループではTNFDフレームワークに沿った開示を行うべくTNFD提言v1.0を参照の上、LEAP分析※1を開始しています。具体的には、ENCORE※2(2024年4月時点)やIBAT※3等による初期的な分析を行い、当社グループにおける優先セクターおよび優先地域を特定の上、想定されるリスクと機会を整理しました。
- ※1LEAP(Locate/Evaluate/Assess/Prepare):自然との接点を「発見」し、依存・影響度を「診断」した上で、リスクと機会を「評価」し対応策や開示を行う「準備」の一連のアプローチ
- ※2Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure(ENCORE):TNFDや環境省が推奨する、自然への依存とインパクトを理解するために役立つ無料オンラインツール
- ※3Integrated Biodiversity Assessment Tool(IBAT):国連環境計画の世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)等により開発された、自然関連情報の地理空間データを提供するツール
Step 1:自然資本との関係性の把握および優先セクターのスクリーニング(ENCOREによる分析)
当社グループにおける事業と自然資本との関係性を把握するため、今回、ENCOREを用いて、まずは引受先および一部の投資先を対象に分析しました。
①各セクターにおける自然への影響度を把握 | ②各セクターの影響度および引受・投資割合との関係性を把握 |
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まず、ENCOREを用いて、セクターごとに、自然資本に対する影響度合いを確認しました。 その後、自然資本の特性ごとに影響度を数値化の上ヒートマップを作成しました。 |
引受および投資それぞれにおいて、①の影響度とセクターごとの割合の2軸で関係性を把握の上、 自然への影響度が大きい、かつ引受・投資における割合が一定基準を満たすセクターを、 優先セクターとしてスクリーニングしました。 |
Step 2:地域性を考慮した拠点評価(IBAT等による分析)
自然資本に対してリスクの高い地域や拠点を特定するため、当社グループの直接操業先、REITによる投資物件および大和エナジー・インフラが投資する再生可能エネルギー発電所を対象に、IBAT・Aqueduct※4等を用いてKBA※5および指定保護地域など(優先地域)の把握・分析に着手しました。
- ※4Aqueduct:世界資源研究所(WRI)が世界の干ばつによる水不足リスクをマッピングしており、水ストレス(水需要の逼迫度合い)を評価できるツール
- ※5Key Biodiversity Area(KBA):生物多様性の保全上重要な地域で、保全すべき地域の特定や生物多様性への影響を可能な限り回避・軽減するために活用する地域情報
自然資本への影響度および優先セクター
Step1における分析の結果、「電気・ガス」「化学」「電気機器」の3セクターについて、自然に対する影響が特に大きい優先セクターであることが示唆されました。なお、今年度は初回の分析として試験的に実施したものであり、今後段階的に分析対象を拡充する予定です。
当社グループにおけるリスクと機会
リスク | 機会 | |
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物理 |
自然災害等による自然資本の毀損に伴い、 投資先・引受先が被るリスクの増加により、
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移行 |
下記による当社グループの収益低下
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今後について
今回の分析および開示は、来年度以降の本格的な開示に向けて、初期的に実施しました。その結果、当社グループにおいても自然資本に対する何らかの影響や、自然資本関連のリスクや機会について示唆を得ました。今後の対応として、優先セクターに関する分析の更なる深掘り等が想定されます。
なお、既に大和アセットマネジメントの「サステナビリティレポート2023」において、同社の日本株ポートフォリオにおける自然資本関連リスクの暫定的な簡易分析結果を開示しています。投資先企業の開示が将来的に充実していくことで、より詳細な分析が可能になると想定しています。
今後ステークホルダーの皆様とともに、ネイチャーポジティブな社会への移行に取り組んでまいります。