証券ビジネスの役割と社会的責任
大和証券グループでは、公正で活力ある金融・資本市場を維持・発展させていくことに加え、金融に社会的な視点を組み込むことで、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えています。例えば、主要事業である証券ビジネスは、企業や政府の資金調達のニーズと、さまざまな投資家の資金運用のニーズを結びつけるという社会的役割を担っています。
当社グループでは、有価証券投資に際して、財務情報のみならず環境面や社会面の取組みなど、ESG(環境・社会・ガバナンス)要素も評価に加味する投資手法を推進しています。
健全な金融・資本市場を支える ~大和証券グループの6つの役割~
資金を必要とする企業を応援し、上場サポートからコンサルティングまで行なっています。資金の流れを生み出し、イノベーションが生まれやすい土壌形成、より活発で安定した金融市場づくりに貢献することで、社会基盤を支え続けます。

役割1 企業等の資金調達
企業は有価証券(株式や債券)を発行することで資金を得て、新製品の開発や新たなサービスの提供に活用しています。これら有価証券を用いた資金調達は、企業の成長とそれに伴う経済の成長に貢献します。
大和証券グループは、有価証券を利用した資金調達を企業等にアドバイスしています。
役割2 新規上場の支援
経済の成長には新たな企業の登場と成長が欠かせません。新規上場はその企業の成長に貢献するのみならず、さまざまな投資家に投資機会を提供します。当社グループは、新規上場のお手伝いをしています。
役割3 有価証券の売買のお手伝い
株式や債券などの有価証券は主に証券取引所などの市場で取引されます。
証券会社は、お客様の有価証券売買をお手伝いしています。また、売買された有価証券が正確に受け渡されるようにすることも重要な仕事です。
役割4 資産形成のお手伝い
当社グループでは、多様な商品やサービスを提供し、お客様に合わせたご提案をすることで、ライフプランニングと資産形成をお手伝いします。
役割5 情報分析と提供
多くのエコノミスト、アナリストおよびストラテジストが、最新の動向と綿密な分析を合わせた多様な情報を、わかりやすい形で提供しています。
役割6 市場の信頼保護
有価証券の市場は、社会の大切なインフラであり、参加者の信頼の上に成り立っています。当社グループでは、市場が公平・公正であるために、情報の管理や取引内容のモニタリングを厳密に行なっています。また、日夜進歩する取引手法への対応や新たな課題等についても積極的に取り組んでいます。
機関投資家として責任ある行動
「日本版スチュワードシップ・コード」
2014年2月に金融庁より公表された「『責任ある機関投資家』の諸原則 《日本版スチュワードシップ・コード》」は、二度の改訂を経て、運用戦略に応じたESG要素を含む中長期的な持続可能性の考慮にもとづき、投資先企業との建設的な『目的を持った対話』(エンゲージメント)を通じて企業価値向上や持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターン拡大を図る責任を機関投資家に対して求めています。
当社グループでは、大和証券および大和アセットマネジメントがこの原則の受入れを表明しています。
「責任ある機関投資家」の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》の受入れについて
大和アセットマネジメントにおける体制
大和アセットマネジメントは、2006年5月に「国連責任投資原則(PRI)」に署名し、企業等のESGに対する取組みを、中長期的な成長力拡大とリスク低減の両面につながるものと捉え、投資判断に活用しています。2020年1月には、同社のESGに対する考え方を明確化した「ESG投資方針」を公表しており、当該方針は原則としてすべての運用戦略に適用されています。
また、同社は2014年5月に「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れを表明した後、上記コードの改訂に伴い2020年9月には受け入れ表明を更新し、継続的かつ積極的にスチュワードシップ責任を遂行するとともに取組み内容の深化にも努めています。同社のスチュワードシップ活動に対する基本的な考え方は「スチュワードシップ活動に関する基本方針」に示されています。なお、エンゲージメントの状況(方針、態勢、テーマ別件数等)をはじめとしたスチュワードシップ活動の詳細は、「スチュワードシップ・レポート」において毎年公表しています。
スチュワードシップ活動の体制
同社のスチュワードシップ活動に係る体制は、実務方針などの意思決定を担うスチュワードシップ委員会と、取締役会からの委任を受けスチュワードシップ活動における利益相反管理を監督するスチュワードシップ監督委員会で構成されています。

スチュワードシップ監督委員会
スチュワードシップ監督委員会は、スチュワードシップ責任を果たす上での利益相反を管理することを目的として2017年1月より設置している機関です。同委員会は、同社のスチュワードシップ活動における利益相反管理を監督し、取締役会への報告や、必要に応じて改善勧告等を行なっています。同委員会は社外取締役と利益相反管理統括責任者である法務コンプライアンス担当役員を構成員とすることで、スチュワードシップ活動における経営・執行からの独立性を確保しています。
スチュワードシップ委員会
スチュワードシップ委員会は、議決権行使方針や建設的な対話の方針といったスチュワードシップ活動に関する基本方針の策定、議決権行使に際しての個別事案の審議・決定、スチュワードシップ活動の向上のための取組みなどを行なっています。同委員会はCIO(Chief Investment Officer)が委員長を務め、運用本部に所属する役員および部室長をメンバーとして構成されています。
責任投資部
責任投資部は、スチュワードシップ活動およびESG投資推進の専門部署として、投資先企業に対する議決権行使や、エンゲージメントといったスチュワードシップ活動全般、投資プロセスへのESGインテグレーションの促進などを担当しています。なお同部は、2022年10月付でスチュワードシップ・ESG推進部より改称しました。
エンゲージメント活動
同社は、企業価値の向上や持続的成長に資する対話を行なうことを目的に「企業等との建設的な対話の方針」を公表し、財務、ESG課題を含む非財務の両面について、積極的に企業等とのエンゲージメントを行なっています。
エンゲージメント活動は、企業調査アナリスト、議決権行使担当者、エンゲージメント・チーム(企業調査アナリストとファンドマネージャーにより構成)という3つの主体により実践しています。2021年には、1,230社と直接対話の機会を持つエンゲージメント活動を行ないました。
2021年に行なったエンゲージメントのうちESG課題を取り上げた対話は、3チーム全体で約4割にのぼり、この割合は増加傾向にあります。
エンゲージメント活動の主体と主な活動

パッシブ・エンゲージメント
近年のETF残高の伸長により運用資産における国内株式インデックスファンドの割合が増加している中、同社はパッシブ・エンゲージメントについても当然の責務であると考えています。2018年から国内株式インデックスファンドの投資先企業に対して、同社のスチュワードシップ活動についてご理解いただくことが対話の第一歩と考えから「議決権の行使に関する方針」等を送付しており、2021年はこれらに加え政策保有株式やダイバーシティ&インクルージョンについての同社の考え方を送付しました。
議決権の行使
同社では、議決権の行使は金融・資本市場を通じて社会および経済の発展に資するという企業理念の実現に向けて非常に重要な役割を担っていると考えており、同社の「議決権の行使に関する方針」について多くの方々に理解していただくべく、その詳細を公表しています。
なお、議決権行使結果については、2017年4月総会分より同社ウェブサイトにて公表しています。株主総会が開催された投資先企業の行使結果につき、個別の投資先企業および議案ごとの賛否判断を、原則として月次で公表しています。
議決権行使方針(国内株式)の見直しおよび検討課題
2022年6月には「議決権の行使に関する方針(国内株式)」を一部改訂し、女性役員に関する基準の対象企業拡大、社外取締役に関する基準等を変更しました。女性役員に関する基準は、2021年3月の一部改訂にてTOPIX100構成企業を対象に新設した基準ですが、エンゲージメントを通じて積極的な取組み等が確認できたことから、対象をTOPIX500構成企業へと拡大しました。また、同方針における今後の検討課題として、「脱炭素・カーボンニュートラル」や「ビジネスと人権」等を掲げています。
投資プロセスへのESG要因の組み込み
同社では、企業等のESGに対する取組みを、中長期的な成長力拡大とリスク低減の両面につながるものと捉え、投資判断に活用しています。企業調査アナリストやファンドマネージャーによる定性評価、クオンツ・アナリストによる定量分析・評価を共有することで、財務情報と非財務情報を統合させた総合的な観点からの企業評価が可能となります。また、上記情報と同社のESGに関する考え方にもとづいて同社独自のESGスコアを算出し、銘柄選択やポートフォリオのリスク把握の参考としています。
同社は、債券運用においても、投資判断に当たっては企業等のESGを考慮しています。企業等に対するエンゲージメント等を通じた持続可能性へのアプローチは株式と同様であるため、同社は社債への投資に際してもESG情報を共有し活用しています。

ESGに関するエンゲージメント
2021年に実施したESGに関するエンゲージメントをテーマ別に見ると、G(ガバナンス)に関するものの比率が依然として最も多いものの、E(環境)やS(社会)の比率は以前に比べ増大しています。なかでも、2021年に同社が注力した、Eの気候変動(20.1%)やSのダイバーシティ(13.3%)は共に10%を超える主要テーマとなっています。
ESGに関するエンゲージメントのテーマ内訳

スチュワードシップ活動を通じた気候変動問題への取組み
同社は、スチュワードシップ活動を通じた気候変動問題への取組みについて、TCFDの推奨する開示フレームワークに沿って、スチュワードシップ・レポートにおいて開示しています。
ESG投資に関する共同イニシアティブへの関与
大和アセットマネジメントとして、以下の社外イニシアティブに署名・賛同しています。
カテゴリー | 名称 | 加盟 タイミング |
---|---|---|
ESG全般 | 国連責任投資原則(PRI) | 2006年5月 |
21世紀金融行動原則 | 2011年11月 | |
ジャパン・スチュワードシップ・イニシアティブ(JSI) | 2022年3月 | |
環境系 | 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) | 2020年12月 |
Net Zero Asset Managers initiative | 2021年12月 | |
Climate Action 100+ | 2021年8月 | |
Investor Agenda | 2021年8月 | |
Statement on Fiduciary Duty and Climate Change Disclosure | 2014年8月 | |
ダイバーシティ・人権系 | 30% Club Japan Investor Group | 2020年5月 |
PRI Advance | 2022年12月 | |
ガバナンス系 | 国際コーポレートガバナンスネットワーク(ICGN) | 2021年4月 |
ESGに関する研修・情報交換
同社は、同社の行動指針に「持続可能な社会に貢献する」ことを掲げており、社会の持続的成長に資するべく組織的に取り組んでいます。
役職員向け研修
全役職員を対象とし、資産運用会社が取り組むべきスチュワードシップ活動やESG全般に関しての知見の共有を目的とした社内研修を実施しています。特にESGに関しては、日々新たな取組みが行なわれている分野であるため、必要に応じて、特定のテーマに関するアップデートを目的とした勉強会も行なっています。
2021年度は、同社のスチュワードシップ活動への理解を深める研修も含め、計7回の研修・勉強会を実施しました。
投資先企業向けESG情報交流会
同社は、投資先企業のESGに対する取組みを、中長期的な成長力拡大とリスク低減の両面につながるものと捉え、重要視しています。その一方で、同社は投資先企業との対話の中で、投資先企業がESGに関する適切な開示方法や情報収集に苦労しているという事を把握し、投資先企業が各社の取組事例を持ち寄り意見交換することは、同社だけでなく投資先企業の今後の取組みの一助になるものと考え、投資先企業を複数集めたESGに関する情報交流会を継続的に開催しています。2021年2月の第1回では「ジェンダーダイバーシティ」をテーマに、2022年5月の第2回では「人的資本」をテーマに開催しました。