6.アセットマネージャーとしての対応

当社のアセットマネジメント部門は、証券アセットマネジメントを担う大和アセットマネジメントと不動産アセットマネジメントを担う大和リアル・エステート・アセット・マネジメント(及び同社が運用する大和証券オフィス投資法人など)を有しています。前者は2020年12月に、後者は2021年12月にTCFD提言への賛同を表明し、両社とも資産運用業務を通じて脱炭素社会の実現を目指しています。

(1)大和アセットマネジメント

① ガバナンス

大和アセットマネジメント(以下、同社)では「スチュワードシップ委員会」で取り決めた「スチュワードシップ活動に関する基本方針」やサステナビリティの考慮を含む「ESG投資方針」等に従って気候変動に関するリスクを含むESG課題に取り組んでいます。活動内容や方針については「スチュワードシップ委員会」で審議・モニタリングを行います。ポートフォリオのTCFDに関するモニタリング状況については、スチュワードシップ委員会から取締役会に報告します。

② 戦略

把握した気候変動に対するリスクや機会は企業評価モデルに反映し、投資先企業の選定に利用しています。また、エンゲージメント活動によって企業を脱炭素経営に導くことで投資先企業の企業価値向上を目指しています。特に気候変動関連についてはCVaR等の指標でシナリオ分析を行いポートフォリオのリスクやレジリエンスの確認を行っています。

特定した気候変動リスクと機会を企業価値評価に反映

■ 運用商品

同社では、脱炭素社会の実現を目指す各種投資信託を提供しています。詳細は、「3.戦略(5)気候変動に関連して推進する戦略的な取組み ① 脱炭素社会実現に資する商品・サービスの開発・提供」をご参照ください。

■ エンゲージメント

同社では、気候変動をマテリアリティの一つと位置付け、投資先企業とのエンゲージメント活動を行っています。詳細は、「3.戦略(5)気候変動に関連して推進する戦略的な取組み ⑦ ステークホルダーとのエンゲージメント強化」をご参照ください。

③ リスク管理

同社は、企業の開示情報に加え、外部ベンダーのデータや独自のリサーチ、企業との対話などを通じて、投資先企業の気候変動のリスクと機会を把握しています。また、外部ベンダーのデータをもとにファンドごとや資産別にGHG排出量の測定や気候変動リスクのシナリオ分析を行える体制を整えており、定期的に分析を行うことでリスクの把握と管理を行っています。

④ 指標と目標

同社は、気候変動に関してファンドごとや各運用資産のGHG排出関連指標としてポートフォリオの総GHG排出量、カーボンフットプリント※1、炭素強度※2などをモニタリング・分析しています。これらのデータや独自のリサーチに基づいた企業とのエンゲージメント活動によって企業の脱炭素経営を促進していきます。

  • ※1ポートフォリオの規模(時価総額)に対する排出量をみる指標
  • ※2投資先企業の売上規模当たりの炭素排出量をみる指標

■ GHG総排出量等主要指標の分析

同社が運用する各資産の総炭素排出量、カーボンフットプリント、加重平均カーボンインテンシティを各ベンチマークと比較しました。それぞれモニタリング・分析を行うことで適切に気候変動関連のリスク管理を行っています。下図にあるようにScope3を上流と下流で分類し、それぞれ該当する排出量を算出し記載しました。投資先企業の総炭素排出量をScope1、2、3、特に3を細かく把握することで投資先企業とのエンゲージメント活動等に活用し、サプライチェーン全体の脱炭素化を促進していきます。

海外株式のカーボンフットプリントや加重平均カーボンインテンシティがベンチマークと比較して大きくなっていますが、これは、インド企業の株式への投資エクスポージャーが拡大したことが影響しています。国内社債については、ベンチマークより高いウェイトで電力会社の社債をポートフォリオに組み入れていることが影響していますが、前年に比べて、ベンチマークとの差異が縮小し、加重平均カーボンインテンシティの数値も減少しています。国内外の高排出企業に対しては、同社及び運用委託先を通じたエンゲージメントを行い、削減を促しています。今後もエンゲージメント活動等を通じて、投資先企業の気候変動に関する取組みを促していきます。

詳細は、同社の「Sustainability Report 2023」をご参照ください。

ポートフォリオの総炭素排出量
Scope1、2
(CO2換算トン)
  当社 ベンチマーク 差異
国内株式 6,987,943 8,313,973 -16%
海外株式 721,398 513,356 41%
国内社債 240,028 89,429 168%
海外社債 45,898 110,696 -59%
合計 7,995,266 9,027,455 -11%
GHG総排出量(Scope1、2、3合計)
GHG総排出量(Scope1、2、3合計)
Scope3 上流
(CO2換算トン)
  当社 ベンチマーク 差異
国内株式 22,097,292 23,971,727 -8%
海外株式 896,617 910,126 -1%
国内社債 298,559 246,728 21%
海外社債 119,330 197,487 -40%
合計 23,411,797 25,326,067 -8%
Scope3 下流
(CO2換算トン)
  当社 ベンチマーク 差異
国内株式 39,591,843 45,105,248 -12%
海外株式 2,166,811 2,268,662 -4%
国内社債 390,827 473,648 -17%
海外社債 357,823 436,166 -18%
合計 42,507,304 48,283,724 -12%

※ ベンチマーク
国内株式:TOPIX(配当込み)、海外株式: MSCI ACWI ex Japan Index、国内社債: Bloomberg Asian-Pacific Japan Corporate TR Index Value Unhedged JPY、
海外社債: Bloomberg Global Aggregate ex-JPY- Corporate TR Index Unhedged USD

出所:大和アセットマネジメント「Sustainability Report 2023

ポートフォリオのカーボンフットプリント(Scope1・2)
ポートフォリオのカーボンフットプリント(Scope1・2)

出所:大和アセットマネジメント「Sustainability Report 2023

ポートフォリオの加重平均カーボンインテンシティ(Scope1・2)
ポートフォリオの加重平均カーボンインテンシティ(Scope1・2)
  • ベンチマークは前項のポートフォリオの総炭素排出量と同様

出所:大和アセットマネジメント「Sustainability Report 2023

(2)大和リアル・エステート・アセット・マネジメント

① ガバナンス

同社は、「気候変動・レジリエンスポリシー」に従い、気候関連課題に係る執行責任者(サステナビリティ推進に係る部署の部長)は、サステナビリティ推進委員会において、気候変動による影響の識別・評価、リスクと機会の管理、適応と緩和に係る取組みの進捗状況、指標と目標の設定等の気候変動対応に関する事項を、気候関連課題に係る最高責任者(代表取締役社長)に対して定期的に報告します。サステナビリティ推進委員会において、気候変動関連の各課題について審議・検討した上で、気候関連課題に係る最高責任者が最終的に意思決定を行います。このような体制のもと、気候関連課題は代表取締役社長により監督されています。

② 戦略

同社は、気候変動が各投資法人に与えるリスクと機会を識別し、事業への財務的影響を評価するために、国際機関等が公表している将来的な気候予測を主な情報源として参照しながら、「1.5℃/2℃シナリオ」「4℃シナリオ」という2つのシナリオを用いて、定性分析を実施しました。

識別したリスクと機会の財務的影響を短期、中期、長期の時間軸に分け、各投資法人に対する影響の相対的な大きさを検証しました。財務的影響が一定程度認められる中期、長期の気候変動リスクは以下のとおりです。

シナリオ分析による財務的影響(大和証券オフィス投資法人)

分類 不動産運用における
リスク・機会の要因
財務への潜在的な影響 区分 財務的影響 対応策
4℃ 1.5℃/2℃
中期 長期 中期 長期
移行リスクと機会 政策 / 法規制 炭素税導入によるGHG排出量に対する規制強化
  • 炭素税導入に伴い、物件のGHG排出量に応じて税負担が増加
リスク
  • エネルギー管理システムや再生可能エネルギーの導入
  • 保有物件のエネルギー消費量/GHG排出量の計画的な低減
  • 戦略的な物件入替/物件改修に伴うGHG排出量の改善
  • 環境認証取得比率の向上
省エネ基準の強化、排出量報告義務の発生
  • 省エネ基準引き上げに伴う改修費用の増加
  • 排出量報告に関連した事業経費の増加
リスク
法規制に適合した物件の競争力向上
  • 環境性能に優れた物件の保有に伴い、賃料収入が増加
  • エネルギー効率改善に伴う水道光熱費の抑制
機会
技術 省エネ・再エネ技術の高度化・普及
  • 新技術導入に伴う改修費用の増加
リスク
  • 先進技術の導入
  • 計画的な改修工事の実施
  • 再生可能エネルギー由来の電力切替推進
  • 省エネ性能向上に伴う水光熱費の削減
機会
市場 物件の環境性能による資産価値の変動
  • 環境認証取得比率に伴い、保有物件の資産価値が変動
  • 環境性能に優れた物件の保有割合に応じて、賃料収入が変動
リスク
  • 環境認証取得比率の向上
  • 再生可能エネルギー由来の電力切替推進
  • 保有物件の環境性能に関する十分な情報開示
機会
投資家やレンダーの投融資スタンスの変化
  • ESG意識が高い投資家やレンダーからの評判の変動
  • ESG意識が高いテナントの入退去需要の変動
  • 金融機関等からの資金調達条件の改善/悪化
リスク
  • 気候変動を含むESG関連情報の適切な情報開示
  • 外部機関によるESG評価の向上
  • サステナビリティファイナンスの活用による資金調達コスト低減
機会
評判 投資家や顧客からの評判低下
  • 投資口価格の下落/ESG格付評価の低下
  • 環境パフォーマンス/レジリエンスの低い物件の収益性低下
リスク
  • ESG分野におけるステークホルダーとのエンゲージメント強化
  • 継続的な環境パフォーマンス改善/環境認証の継続取得
物理的リスク 急性 風水害の激甚化による損害の増加
  • 修繕費、保険料の増加
  • 稼働率低下による賃料収入の減少
  • 営業機会の損失/業務継続性に対するリスク増加
  • 保有物件の浸水防止、損傷、損壊等に備えるための改修費の増加
リスク
  • ハザードマップ等の活用によるリスク把握
  • レジリエンスの高い物件の保有
  • 高効率空調機器への設備更新、エネルギー管理システム導入
  • グリーンリース等のテナントとの協働による省エネ対応実施
  • BCP対応強化
  • 保有物件での緑化推進
慢性 平均気温上昇/海面上昇による被害の増加 リスク

シナリオ分析による財務的影響(大和証券リビング投資法人)

分類 不動産運用における
リスク・機会の要因
財務への潜在的な影響 区分 財務的影響 対応策
4℃ 1.5℃/2℃
中期 長期 中期 長期
移行リスクと機会 政策 / 法規制 炭素税導入によるGHG排出量に対する規制強化
  • 炭素税導入に伴い、物件のGHG排出量に応じて税負担が増加
リスク
  • エネルギー管理システムや再生可能エネルギーの導入
  • 保有物件のエネルギー消費量/GHG排出量の計画的な低減
  • 戦略的な物件入替/物件改修に伴うGHG排出量の改善
  • 環境認証取得比率の向上
省エネ基準の強化、排出量報告義務の発生
  • 省エネ基準引き上げに伴う改修費用の増加
  • 排出量報告に関連した事業経費の増加
リスク
法規制に適合した物件の競争力向上
  • 環境性能に優れた物件の保有に伴い、賃料収入が増加
  • エネルギー効率改善に伴う水道光熱費の抑制
機会
技術 省エネ・再エネ技術の高度化・普及
  • 新技術導入に伴う改修費用の増加
リスク
  • 先進技術の導入
  • 計画的な改修工事の実施
  • 再生可能エネルギー由来の電力切替推進
  • 省エネ性能向上に伴う水光熱費の削減
機会
市場 物件の環境性能による資産価値の変動
  • 環境認証取得比率に伴い、保有物件の資産価値が変動
  • 環境性能に優れた物件の保有割合に応じて、賃料収入が変動
リスク
  • 環境認証取得比率の向上
  • 再生可能エネルギー由来の電力切替推進
  • 保有物件の環境性能に関する十分な情報開示
  • 環境性能に優れた物件の保有に伴い、保有物件の資産価値や
    賃料収入が増加
機会
投資家やレンダーの投融資スタンスの変化
  • ESG意識が高い投資家やレンダーからの評判の変動
  • ESG意識が高いテナントの入退去需要の変動
  • 金融機関等からの資金調達条件の改善/悪化
リスク
  • 気候変動を含むESG関連情報の適切な情報開示
  • 外部機関によるESG評価の向上
  • サステナビリティファイナンスの活用による資金調達コスト低減
機会
評判 投資家や顧客からの評判低下
  • 投資口価格の下落/ESG格付評価の低下
  • 環境パフォーマンス/レジリエンスの低い物件の収益性低下
リスク
  • 気候変動を含むESG関連情報の適切な開示
  • ESG分野におけるステークホルダーとのエンゲージメント強化
  • 継続的な環境パフォーマンス改善/環境認証の継続取得
物理的リスク 急性 風水害の激甚化による損害の増加
  • 修繕費、保険料の増加
  • 稼働率低下による賃料収入の減少
  • 営業機会の損失/業務継続性に対するリスク増加
  • 保有物件の浸水防止、損傷、損壊等に備えるための改修費の増加
リスク
  • ハザードマップ等の活用によるリスク把握
  • レジリエンスの高い物件の保有
  • 高効率空調機器への設備更新、エネルギー管理システム導入
  • グリーンリース等のテナントとの協働による省エネ対応実施
  • BCP対応強化
  • 保有物件での緑化推進
慢性 平均気温上昇/海面上昇による被害の増加 リスク

③ リスク管理

各投資法人は、気候変動リスクと機会が投資法人の経営活動、戦略、財務計画等に与える影響を識別・評価・管理するためのプロセスを「気候変動・レジリエンスポリシー」に定めています。

  • 気候変動課題に係る執行責任者は、原則として年1回、気候関連リスク・機会の整理を行い、サステナビリティ推進委員会に対して進捗報告を行います。
  • サステナビリティ推進委員会では、各投資法人の運用に影響を与える事業・財務計画上に重要な気候変動リスクと機会を継続的に識別・評価・管理しており、上記報告を元に事業戦略上の優先課題を整理します。
  • 気候関連課題に係る最高責任者は、サステナビリティ推進委員会で審議された重要な優先順位の高い気候関連リスクを既存の全社リスク管理プログラムにおいても考慮するよう指示し、リスク識別・評価・管理プロセスの統合を図ります。

④ 指標と目標

各投資法人は、脱炭素社会への移行を機会と捉え、気候変動リスク・機会の管理プロセスにおける主なモニタリング指標として、以下を目標KPI(重要指標)として設定しています。

詳細は、大和証券オフィス投資法人及び大和証券リビング投資法人の「環境への取組み」をご参照ください。

指標と目標(大和証券オフィス投資法人)

目標KPI
CO2排出量削減 中期目標(2030年度)
原単位ベースで2013年度対比46%削減
長期目標(2050年度)
カーボンニュートラル達成
環境認証取得比率 中期目標(2030年度)
ポートフォリオ全体の環境認証取得比率を70%以上

指標と目標(大和証券リビング投資法人)

目標KPI
CO2排出量削減 中期目標(2030年度)
原単位ベースで2022年度対比20%削減
長期目標(2050年度)
カーボンニュートラル達成
環境認証取得比率 中期目標(2030年度)
ポートフォリオ全体の環境認証取得比率を20%以上