リスク管理

大和証券グループでは、収益性や成長性を追求する一方で、事業に伴う各種のリスクを適切に認識・評価し効果的に管理することが重要であると考えています。リスクとリターンのバランスがとれた健全な財務構造や収益構造を維持し、短期のみならず、気候変動リスクのような中長期で顕在化するであろうリスクも適切に管理することにより、企業価値の持続的な向上を図ります。

リスク管理態勢

リスク管理態勢

大和証券グループ本社は、「リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)」にもとづいてグループ全体のリスク管理を行なううえで、RAFを文書化した「リスクアペタイト・ステートメント(RAS)」ならびにリスク管理の基本方針、管理すべきリスクの種類、主要リスクごとの担当役員・所管部署などを定めた「リスク管理規程」を取締役会で決定しています。「RAS」および「リスク管理規程」にもとづき、取締役会および監査委員会はグループ全体のリスク管理を監督しています。さらに、実効的なリスクガバナンス態勢を構築するため、「『3つの防衛線』に係るガイドライン」を定め、リスク管理の枠組みを整備しています。

大和証券グループのリスク管理規程で定める基本方針

  1. 1.リスク管理への経営の積極的な関与
  2. 2.当社グループの保有するリスクの特性に応じたリスク管理態勢の整備
  3. 3.統合的なリスク管理にもとづくリスク総体の把握と自己資本の充実および流動性に係る健全性の確保
  4. 4.リスク管理プロセスの明確化

グループ各社はリスク管理の基本方針にもとづき、各事業のリスク特性や規模に応じたリスク管理を行ない、大和証券グループ本社のリスクマネジメント部および各リスク所管部署がグループ各社のリスク管理態勢およびリスクの状況をモニタリングしています。モニタリングを通して把握したグループ各社のリスクの状況のほか、各社におけるリスク管理上の課題などについては、必要に応じて執行役の中から選任されたCROへ報告するフローとなっており、CROは各社の業務の規模・特性およびリスクの状況に応じてリスク管理態勢およびリスクの状況等に関する是正指示、リスク管理態勢の効果検証および必要に応じた見直しを行ないます。CROは、CEOに対するリスク報告を担当しており、内部監査責任者および監査委員会の委員を兼任しておりません。
大和証券グループ本社の執行役会の分科会であるグループリスクマネジメント会議においては、各社におけるリスクの状況などが報告され、リスク管理に係る方針および具体的な施策を審議・決定しています。リスク管理のプロセスについてもグループリスクマネジメント会議において議論され、見直しが行なわれています。グループリスクマネジメント会議は監査委員会とは別の会議として構成されていますが、その内容は監査委員会にも報告されています。また取締役会においては、RAFやトップリスク等に関する事項の審議・決定を通じ、リスク管理態勢およびプロセスの効果を検証しています。リスク管理のプロセスについてもグループリスクマネジメント会議において議論され、執行役からの示唆・指示にもとづいて見直しが行なわれています。主要な子会社においては、リスクマネジメント会議などを定期的に開催し、リスク管理の強化を図っています。

環境・社会関連ポリシーフレームワーク

大和証券グループでは、事業における環境・社会リスクの管理体制を強化するため、2021年6月に「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」(投融資方針)を策定しています。環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に対してリスクを認識し、投融資先をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメント等を通じて適切な対応を行なうことで、当社グループのサプライチェーン・マネジメントを強化するとともに、皆様と共により良い社会を創造していきたいと考えています。

  • 大和アセットマネジメント株式会社においては「ESG投資方針」として、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社においては「ESGに関する方針」として、本枠組みとは別にポリシーを定めています。

大和証券グループ「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」

  1. 1.はじめに
    国内外において気候変動や人権問題等をはじめとする環境・社会への課題認識が一層高まる中、大和証券グループ(以下、「当社グループ」)は、総合証券グループとしての社会的使命とステークホルダーの皆様からの要請に応えるべく、サステナブルで豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。
    当社グループは、2012年に「環境ビジョン」を掲げ、同時に公表した「環境理念」および「環境基本方針」のもと、事業活動を通じた環境課題の解決と継続的な環境負荷の低減に取り組んできました。さらに2021年5月には、SDGsの実現を中核に据えた経営ビジョン“2030Vision”を策定し、脱炭素社会への移行の促進とレジリエントな社会の実現に向けて積極的に取り組む姿勢を明確にしています。
    こうした中、当社グループは、地球環境/生物多様性の保全や人権の保護など、環境・社会リスクの管理体制を強化するため、「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」(以下、「本フレームワーク」)を策定しました。環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に対してリスクを認識し、エンゲージメント等を通じて適切な対応を行うことで、ステークホルダーの皆様と共により良い社会を創造していきたいと考えています。
    なお、当社グループは、カーボンニュートラルの実現に繋がるイノベーションや技術への取組みを積極的に支持し、その支援のために、トランジション・ファイナンスを含む多様な金融ソリューションの提供に注力してまいります。
  2. 2.本フレームワークに関するガバナンス
    当社グループは、環境・社会に関するSDGsやESGの課題について、代表執行役社長(CEO)を委員長とするサステナビリティ推進委員会にて議論を行っています。これらの議論の結果を取締役会に適宜報告する、また重要な事項は取締役会の決議を経ることにより、取締役会による監督を行う体制を強化しています。本フレームワークは、サステナビリティ推進委員会での議論を経て、取締役会にて承認されました。
    本フレームワークは、運用状況や外部環境等の変化を踏まえながらより厳格な運用を目指し、定期的に見直しを行います。
  3. 3.適用対象となる商品・サービス
    本フレームワークは、大和証券グループ本社およびその主要なグループ会社が実施する新規の投融資と債券/株式発行にかかる引受(以下、投融資等)を対象とします。
  4. 4.適用対象となる事業

    (1) 投融資等を禁止する事業

    ・ユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業
    ・ラムサール条約指定湿地へ負の影響を与える事業
    ・ワシントン条約に違反する事業
    ・児童労働、強制労働、人身取引など人権侵害に繋がる事業

    (2) 投融資等の際に留意する事業

    ①先住民族の地域社会へ影響を与える事業
    当該事業への投融資等に際しては、先住民族の地域社会に対して文化的、社会的、経済的に深刻な被害を与えないか、またそれらに対する適切な対策が講じられているか等に留意し、環境・社会リスク評価を含むESGデュー・デリジェンス(以下、「ESGデュー・デリジェンス」)を実施の上、その判断に活用します。

    ②非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業
    当該事業への投融資等に際しては、住民が望まない移転を強いられるような土地収用が発生しないか、またそれらに対する適切な対策が講じられているか等に留意し、ESGデュー・デリジェンスを実施の上、その判断に活用します。

    ③石炭火力発電の新規建設および既存設備の拡張事業
    当該事業を資金使途とする投融資等を禁止します。
    ただし、債券/株式発行にかかる引受について、2050年までの温室効果ガス排出量のネットゼロ目標を公表している発行体やパリ協定の目標達成に整合的な最新技術を使用する当該事業に限って、個別に検討する場合があります。

    ④大量破壊兵器/非人道的兵器の製造事業
    当該事業を資金使途とする投融資等を禁止します。大量破壊兵器としては核兵器、化学兵器、生物兵器など、非人道的兵器としてはクラスター爆弾、対人地雷などが該当します。

    ⑤パーム油農園開発事業
    当該事業への投融資等に際しては、乱開発により野生生物の生息地が失われることで生物多様性の喪失に繋がっていないか、地元住民との土地紛争や児童労働、強制労働、人身取引など人権侵害が起きていないか、またそれらに対する適切な対策が講じられているか等に留意し、ESGデュー・デリジェンスを実施の上、その判断に活用します。
    なお、投融資等を実施する場合、当該事業者に対しては、パーム油の国際的な認証制度であるRSPO (Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)の取得状況を確認し、未取得の場合には取得を推奨します。また、NDPE(No Deforestation, No Peat and No Exploitation:森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ)等の環境・人権方針の策定を推奨します。
    また、当該事業者に対する新規の投融資については、そのサプライチェーンにおいても、同様の取組みがなされるよう、サプライチェーン管理の強化、およびトレーサビリティの向上を推奨します。

    ⑥森林破壊を伴う事業
    当該事業への投融資等に際しては、生態系の破壊による環境への負の影響が生じないよう適切な対策が講じられているか、また違法な伐採が行われていないか等に留意し、ESGデュー・デリジェンスを実施の上、その判断に活用します。
    なお、投融資等を実施する場合、当該事業者に対しては、国際的な森林認証制度であるFSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)もしくは同等の認証の取得や、NDPE等の環境・人権方針の策定を推奨します。
    また、当該事業者に対する新規の投融資については、そのサプライチェーンにおいても、同様の取組みがなされるよう、サプライチェーン管理の強化、およびトレーサビリティの向上を推奨します。

    ⑦炭鉱採掘事業
    当該事業において、山頂除去採掘(Mountain Top Removal:MTR)方式で行う事業や新規の一般炭採掘事業を資金使途とする投融資等を禁止します。
    また、当該事業への投融資等に際しては、落盤事故、出水事故、ガス爆発や、違法労働等の人権侵害が発生しないよう、労働安全や衛生環境の確保に関して適切な対策が講じられているか等に留意し、ESGデュー・デリジェンスを実施の上、その判断に活用します。

    ⑧大規模な水力発電の建設事業
    当該事業への投融資等に際しては、ダム建設に伴う環境や生態系の破壊および地域住民への負の影響に対して適切な対策が講じられているか等に留意し、ESGデュー・デリジェンスを実施の上、その判断に活用します。

    ⑨石油・ガス開発事業
    当該事業への投融資等に際しては、環境や生態系および地域社会への影響に対して適切な対策が講じられているか等に留意し、ESGデュー・デリジェンスを実施の上、その判断に活用します。特に、北極圏での開発事業、オイルサンドやシェールオイル・ガスの開発事業、パイプライン事業への投融資等については、環境や社会に大きな負の影響を与える可能性があるため、慎重に判断します。

  5. 5.評価のプロセス
    上記事業への投融資等に際しては、対象となる案件に対して初期的なESGデュー・デリジェンスを実施します。当該評価の結果、追加的な確認が必要と判断した場合には、強化ESGデュー・デリジェンスを実施し、投融資等の可否を判断します。当該案件の実施が当社グループの企業価値を大きく毀損する可能性がある場合には、さらに経営陣による追加協議を行い、最終的な投融資等の可否を判断します。
  6. 2023年12月27日

管理すべきリスクの種類・主要リスクごとの管理体制

大和証券グループが定める管理すべきリスク

グループで展開するビジネスには、多種多様なリスクが存在します。健全な財務構造や収益構造を維持するためには、事業特性やリスク・プロファイルを踏まえてこれらのリスクを認識し、かつ適切な評価のもとに管理していくことが重要であると考えています。
当社グループは、自己勘定を活用して一時的に販売目的の商品ポジションを保有し、お客様への商品提供を行なうため、相場変動やヘッジが機能しないことに起因する市場リスク、外貨を含めた流動性リスク、取引先や発行体に対する信用リスクのほか、業務を執行するうえで必然的に発生するオペレーショナルリスクや意思決定にモデルを活用することによるモデルリスクなどが生じます。また、ハイブリッド戦略による成長投資を実行することに伴い、投資先の業績や信用状態の悪化、市場環境の変化等に起因する投資リスクも発生します。そのため、ストレステスト※1やトップリスク管理を活用し、フォワードルッキングな視点でグループ内における資本や流動性に与える影響を計測するなど、統合的なリスク管理を行なっています。

  1. ※1当社グループにとって重大な影響を及ぼす蓋然性のあるストレスシナリオを想定して、資本や流動性、業務体制への影響を統合的に評価すること

トップリスク

リスク事象のうち、当社の事業の性質に鑑みて特に注意すべきものをトップリスクとして選定し管理しています。トップリスクは経営陣が選定する体制としており、選定に際しては、経営陣が広範なリスクを認識・議論できるような枠組みを整備しています。具体的には、広範なリスク事象を網羅的に「見える化」するために、社内外より収集したリスク事象をもとに、関連部署が整理・抽出したリスク事象をトップリスクの候補とします。そのうえで、大和証券グループ本社の取締役・執行役が、当社グループの業績に与える影響度と当該リスク事象の発生可能性からフォワードルッキングに評価して、トップリスクを当該候補から抽出して選定します。
特に当社グループは気候変動をトップリスクのひとつとして位置付けており、ストレステストを活用したシナリオ分析を行ったうえで、その結果を経営陣に報告し、開示しています。

気候変動リスクの管理

トップリスク一覧

リスク事象 具体例
国際紛争・対立の深刻化 ロシア・ウクライナ紛争、米中対立激化(台湾有事)等
金融危機の再来
日本の財政不安による国債格下げや円資産の暴落
米国のスタグフレーションリスク(インフレと景気後退の同時進行)
中国の景気後退
DX(デジタルトランスフォーメーション)への不十分な対応 DXの対応が不十分であることによる競争力の低下
オペレーショナル・レジリエンスへの不十分な対応 自然災害やサイバー攻撃、システム障害等に対するレジリエンスが不十分なことにより、顧客へ適切なサービスを提供できず、当社のレピュテーションが毀損
気候変動 気候変動に伴う保有資産の価値低下及び売却機会の減少
大規模地震・水害 災害に伴う各種コストの増加
投資先の業績悪化・資産価値毀損
サイバー攻撃
システム障害
コンプライアンスリスク マネー・ローンダリング、インサイダー取引を含む役職員による不適切な行為等
情報セキュリティリスク 重大な情報漏えい等

①市場リスク管理

市場リスクとは、株式・金利・為替・コモディティなどの相場が変動することにより損失を被るリスクです。
当社グループのトレーディング業務では、市場流動性を提供することで対価を得るとともに、一定の金融資産等の保有を通じて市場リスクを負っています。当社グループでは、損益変動の抑制のために適宜ヘッジを実施していますが、ストレス時にはヘッジが有効に機能しなくなる可能性があるため、財務状況や対象部門のビジネスプラン・予算などを勘案したうえで、VaR(バリュー・アット・リスク)※1および各種ストレステスト※2による損失見積りが自己資本の範囲内に収まるように、それぞれ限度枠を設定しています。その他、ポジション、感応度などにも限度枠を設定しています。
当社グループのトレーディング業務を担当する部門において、自らの市場リスクを把握する目的でポジションや感応度を算出し、モニタリングを行なっている一方で、リスク管理部署でも市場リスクの状況をモニタリングし、設定された限度枠内であるかどうかを確認のうえ、経営陣に日次で報告しています。

  1. ※1特定のポジションを一定期間保有すると仮定した場合において、将来の価格変動により一定の確率の範囲内で統計的に予想される最大の損失額
  2. ※2過去の大幅なマーケット変動にもとづくシナリオや、仮想的なストレスイベントにもとづくシナリオにもとづき発生し得る、当社グループにとって重大な損失額を算出すること

大和証券グループ(連結) VaR(バリュー・アット・リスク)

VaRの範囲と前提

  • 対象:トレーディング勘定
  • 信頼水準:片側99%、保有期間:1日
  • 商品間の価格変動の相関を考慮

(十億円)

  21/6 21/9 21/12 22/3 22/6 22/9 22/12 23/3
VaR(月末) 1.59 1.74 1.95 1.92 1.35 1.07 1.04 1.33
四半期
最大値 1.83 2.07 2.58 2.37 1.96 1.52 1.42 1.85
最小値 0.82 1.35 1.43 1.55 0.99 0.94 0.83 1.04
平均値 1.37 1.64 1.90 1.90 1.54 1.13 1.05 1.44
リスクファクター別(月末)
株式 0.25 0.41 0.24 0.40 0.27 0.18 0.42 0.33
金利 0.66 1.28 1.29 1.20 0.86 1.00 0.78 0.68
為替 0.45 0.49 0.48 0.51 0.22 0.39 0.45 0.51
コモディティ 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00

②信用リスク管理

信用リスクとは、金融取引の取引先や保有する金融商品の発行体のデフォルト、あるいは信用力の変化などにより損失を被るリスクです。当社グループのトレーディング業務における信用リスクには取引先リスクと発行体リスクがあります。
当社グループは、商品提供や資産運用・投資を行なうことに伴い、さまざまな商品・取引のエクスポージャーが特定の取引先グループに集中するリスクがあります。当該取引先グループの信用状況が悪化した場合、大幅な損失が発生する可能性があるため、一取引先グループに対するエクスポージャーの合計に対し限度額を設定し、定期的にモニタリングしています。

取引先リスク

当社グループが一取引先グループに対して許容できる与信相当額の上限を設定し、定期的にモニタリングしています。

発行体リスク

マーケットメイクにより保有する金融商品の発行体の信用リスクについてもリスク量をモニタリングしています。

③流動性リスク管理

流動性リスクとは、市場環境の変化、当社グループ各社の財務内容の悪化などにより資金繰りに支障をきたすリスク、あるいは通常よりも著しく高いコストでの資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクです。

資金調達の基本方針

当社グループは、多くの資産および負債を用いる有価証券関連業務や、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行なっています。環境が大きく変動した場合においても業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により新規の資金調達および既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限および調達先の分散を図っています。

流動性管理指標を用いた流動性管理態勢

大和証券グループ本社は、当社グループに適用される規制上の連結流動性カバレッジ比率および連結安定調達比率のほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しています。
一定期間内に期日が到来する無担保調達資金および同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対しさまざまなストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行なえない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでいます。

コンティンジェンシー・ファンディング・プラン

また、当社グループは、流動性リスクが顕在化した場合には金融機関の経営破綻に直結するおそれがあることを認識しており、グループが一体となって流動性危機時に適切に対応するため、実施すべき対応手段、役割・権限、手続き等を事前に定めたコンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しています。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めるものです。これにより当社グループは機動的に流動性を確保する態勢を整備しています。

④オペレーショナルリスク管理

オペレーショナルリスクとは、内部プロセス・人・システムが不適切であること、もしくは機能しないこと、または外生的事象が生起することから生じる損失に係るリスクです。

主なオペレーショナルリスクの定義

種類 定義
事務リスク 役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより損失を被るリスク
システムリスク コンピュータシステムのダウンまたは誤作動、システムの不備などに伴い、損失を被るリスク、さらにコンピュータが不正に使用されることにより損失を被るリスク
情報セキュリティリスク 情報資産に対する脅威の発現のために、情報セキュリティ(機密性、完全性、可用性の維持)が確保されないリスク
コンプライアンスリスク 役職員が企業倫理および法令諸規則等に従わないことにより損失を被るリスク、国内における顧客等との法的紛争により損失を被るリスク
リーガルリスク 不適切な契約締結、契約違反、海外店に係る顧客等との法的紛争により、損失を被るリスク
人的リスク 労務管理や職場の安全環境上の問題が発生することにより損失を被るリスク、必要な人的資源が確保されないリスク
有形資産リスク 自然災害や外部要因または役職員の過失などの結果、有形資産の毀損等により損失を被るリスク

当社グループでは、オペレーショナルリスクを上表7つに分類し、各リスクを所管する部署を定めて管理しています。業務の高度化・多様化、システム化の進展などに伴いさまざまなリスクが生じており、オペレーショナルリスク管理の重要性は年々高まっています。
当社グループの主要なグループ各社では、大和証券グループ本社のオペレーショナルリスク管理に関する規程にもとづき、RCSA(リスク・コントロール・セルフアセスメント)を実施するなど、適切なオペレーショナルリスク管理を行なっています。加えて、権限の厳正化、人為的ミス削減のための事務処理の機械化、業務マニュアルの整備などの必要な対策を講じており、グループ各社の事業特性に応じたオペレーショナルリスクの削減に努めています。

  • RCSA
    所定のリスク評価シートを用いて、オペレーショナルリスクの特定・把握・評価を行ない、発生頻度、影響度からリスクを分析し、リスク軽減策などの有効性を評価、検証することです。

⑤モデルリスク管理

モデルリスクとは、モデルの開発、実装における誤り、又はモデルの誤用に起因して、直接的間接的損失を被るリスクです。
実効性のあるモデルリスク管理を実施するため、モデル関係者の役割および責任を明確化し、モデルのライフサイクル全般に対して組織的に管理する体制を整備しております。具体的にはモデルの使用開始前・変更時の管理としてモデル検証と承認プロセスの整備し、使用期間中の管理として、モニタリング、定期検証を実施しています。

⑥投資リスク管理

投資リスクとは、投資先の業績や信用状態の悪化、市場環境の変化等により、当社が行なう投資の価値が毀損する、あるいは追加の資金拠出が必要となるリスクや、投資から得られる収益が期待を下回るリスクであり、ポートフォリオレベルおよび個別案件レベルで管理を行なっています。
ポートフォリオレベルについては、投資集中状況を適切に管理するために、業種別等のグループ横断的な限度額を設定し、定期的にモニタリングしています。個別案件レベルについては、一定基準にもとづいて、投資実行前のリスクを検証するとともに、投資実行後のリスクの状況についても継続的にモニタリングしています。

⑦レピュテーショナルリスク管理

レピュテーショナルリスクとは、当社グループに関する風評や、誤った情報などにより当社グループの信用・評判・評価が低下し、不測の損失ならびに当社グループの取引先の動向への悪影響などが生じるリスクです。さまざまな事象に起因するため、その管理手法は必ずしも一律のものではありません。
当社グループでは、特に情報管理と情報提供の観点からディスクロージャー・ポリシーにもとづく各種規程を整備し、大和証券グループ本社にディスクロージャー委員会を設置しています。
当社グループ各社においては、ディスクロージャー委員会にレピュテーショナルリスクの発生が想定される情報を報告することが義務付けられており、大和証券グループ本社での情報の把握、一元管理と、同委員会決定によるタイムリーで正確な情報発信を行なっています。
また、当該リスクが発生した場合には、当社グループへの影響を最小限にとどめるため、レピュテーショナルリスクにかかる問題・事象の状況把握に努め、誤りや不正確な情報については的確に是正し、誹謗中傷などに対しては、適切な対処を講じるなど、リスクの未然防止および極小化を図る広報・IR活動体制をとっています。

⑧会計・税務リスク管理

会計・税務リスクとは、会計または税務における基準・法令諸規則等に照らし適正な会計処理・開示、または適正な税務申告・納付が行なわれないリスク、およびそれらに伴い損失を被るリスクです。
当社グループでは、財務報告に係る内部統制に関する基本規程に則り、財務報告に係る内部統制の整備および運用ならびに改善を図ることで会計リスクの削減に努めています。
また、主要なグループ会社に対して税務リスク管理として報告が必要な事項を通知し、適時に受領することで、当社グループ全体の税務リスク管理態勢およびリスク状況を適切に把握し、税務リスクを削減することに努めています。

事業継続計画(BCP)

大和証券グループでは、地震、火災、風水害、異常気象、テロ、大規模停電、重大な感染症などによる社会的インフラの停止によって、本店(本社機能)、支店、データセンターが被災して機能できなくなった場合を想定し、証券市場の機能維持とお客様の生活・経済活動維持の観点から重要な業務を優先して再開・継続させることを目的として、BCPを策定しています。この計画に沿って、お客様および社員の生命の安全確保と資産の保護を図りつつ、証券会社としての事業の公共性に鑑み、重要業務を継続させていきます。具体的には、国内最高水準のバックアップセンターを備えるとともに、本社機能が麻痺した場合においても、代替オフィスにおいて平時と同様に重要業務を継続できる体制を構築しています。

優先して再開・継続させる重要業務

  1. 1.既約定未受渡取引の対市場決済業務
  2. 2.出金業務
  3. 3. 新規の受注業務として、以下の商品の売りおよび解約、信用取引の売り埋めの顧客注文
    • 国内上場株式
    • MRF
    • 個人向け国債
    • 普通預金

地域ごとに異なる災害リスクへの対策

大和証券は全国に拠点がありますが、地域ごとに災害リスクが異なるため、営業店ごとの防災計画を策定し、防災備蓄品の配備にも反映させています。また、各地域の自治体が出しているハザードマップを各支店に送るほか、イントラネットでも閲覧できるようにしています。