リスク管理

TCFD提言の「リスク管理」では、どのように気候関連のリスクを特定・評価し、管理するかについての開示が推奨されており、当社グループはこれに沿った情報開示を進めています。

気候変動リスクの管理

リスク管理の概要

当社グループは、気候変動リスクを含む各種リスクを適切に識別・評価し効果的に管理することが重要であると認識しています。健全な財務構造や収益構造を維持し、短期のみならず、気候変動リスクのような中長期で顕在化しうるリスクも適切に管理することにより、企業価値の持続的な向上を図ります。

グループ各社は、グループ本社のリスク管理の基本方針に基づき、リスクマネジメント部およびリスク分掌部署においてリスクをモニタリングしています。リスク管理の基本方針は、「リスク管理規程」として取締役会において審議・決定します。また、気候関連課題を含むリスク課題については、執行役会の分科会であるグループリスクマネジメント会議に報告し、審議・決定しています。

気候変動リスクのリスクアペタイト・フレームワークへの追記

グローバル金融機関として事業戦略と整合的なリスクテイクの方針を定め、リスクガバナンスを強化するため、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を導入しています(図表3-1)。RAFとは、収益目標や事業戦略達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量をリスクアペタイトとして定め、リスクテイク方針全般に関する社内の共通言語として用いる経営管理の枠組みです。RAFは、「リスクアペタイト・ステートメント」として文書化の上、取締役会において審議・決定し、年2回見直しを行います。「リスクアペタイト・ステートメント」には、2021年度より気候変動リスクを追記しています。これにより、気候関連のリスクについて、そのリスクプロファイルに応じて適切に識別・評価し効果的に管理していきます。

図表3-1 リスクアペタイト・フレームワークの概念図

図表3-1 リスクアペタイト・フレームワークの概念図

トップリスク管理における気候変動リスク

リスク事象のうち、当社グループの事業の性質に鑑みて特に注意すべきものをトップリスクとして選定し管理しています。2022年度、気候関連のリスク管理の重要性を踏まえて、気候変動リスクを「トップリスク」に位置づけました(図表3-2)。

図表3-2 トップリスク一覧

リスク事象 具体例
国際紛争・対立の深刻化 ロシア・ウクライナ紛争、米中対立激化等
米国のインフレ懸念・金利上昇
社会貢献意識(ESG)の高まり ESGへの対応や開示が不十分であると見なされることによる当社グループの企業価値の毀損
DX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な広まり DXの対応が不十分であることによる競争力の低下
気候変動 気候変動に伴う保有資産の価値低下および売却機会の減少
大規模地震・水害 災害に伴う各種コストの増加
投資先の業績悪化・資産価値毀損
サイバー攻撃
システム障害
コンプライアンスリスク マネー・ローンダリング、インサイダー取引を含む役職員による不適切な行為等
情報セキュリティリスク 重大な情報漏えい等

既存のリスク管理への統合

事業においては、多種多様なリスクが存在します。当社グループは、自己勘定を活用して一時的に販売目的の商品ポジションを保有し、お客様への商品提供を行うため、外貨を含めた流動性リスク、相場変動に起因する市場リスク、取引先や発行体に対する信用リスク、業務を執行する上で必然的に発生するオペレーショナル・リスクや意思決定にモデルを活用することによるモデルリスク等が生じます。また、ハイブリッド戦略による成長投資を実行することに伴い、投資先の業績や信用状態の悪化、市場環境の変化等に起因する投資リスクも発生します。そのため、フォワードルッキングな視点でグループ内における資本や流動性に与える影響を計測する統合リスク管理を行っています。

気候変動リスクは各リスク(市場リスク、信用リスク、流動性リスク等)を発生又は増幅させる要因であるため、既存のリスク管理の枠組みの中で気候変動リスクの影響を考慮できるように体制を継続的に整備しています。

事業継続計画(BCP)

当社グループでは、異常気象、風水害などによる社会インフラの停止によって本店や支店、データセンターが被災し機能できなくなった場合を想定し、証券市場の機能維持とお客様の経済活動維持の観点から重要な業務を優先して再開・継続させることを目的として、事業継続計画(BCP)を策定しています。これにより、万一の本社機能等の停止の際においても、重要業務を継続できる体制を構築しています。

ファイナンスにおける環境・社会リスクの管理

ファイナンスにおける環境・社会リスクの管理を強化するため、当社グループは2021年6月、環境・社会関連ポリシーフレームワークを策定・公表しました。本フレームワークにおいては、新規の投融資を対象とし、投融資を禁止する事業および留意する事業を定めています。さらに同年12月には、環境・社会リスクの管理体制を一層強化するため、新規の投融資に加えて当社グループの主要業務である債券/株式発行にかかる引受にまで対象を拡大しました。

本フレームワークは、自然環境・生態系の破壊や人権侵害など環境・社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に対して、リスクを認識し管理するための指針となります。禁止する事業として、ワシントン条約に違反する事業や児童労働、強制労働など人権侵害に繋がる事業など4事業を、留意する事業には石炭火力発電の新規建設事業や森林破壊を伴う事業など9事業を定めています(図表3-3)。

これらの事業への投融資等に際しては、対象となる案件に対して初期的なESGデュー・デリジェンスを実施します。当該評価の結果、追加的な確認が必要と判断した場合には、踏み込んだ調査を行う強化ESGデュー・デリジェンスを実施し、投融資等の可否を判断します。当該案件の実施が当社グループの企業価値を大きく毀損する可能性がある場合には、さらに経営陣による追加協議を行い、最終的な投融資等の可否を判断します。

図表3-3 投融資等を禁止する事業および留意する事業

投融資等を禁止する事業
ユネスコ指定世界遺産へ負の影響を与える事業
ラムサール条約指定湿地へ負の影響を与える事業
ワシントン条約に違反する事業
児童労働、強制労働など人権侵害に繋がる事業
投融資等の際に留意する事業
横断的 先住民族の地域社会へ影響を与える事業
非自発的住民移転に繋がる土地収用を伴う事業
特定 石炭火力発電の新規建設事業
大量破壊兵器/非人道的兵器の製造事業
パーム油農園開発事業
森林破壊を伴う事業
炭鉱採掘事業
大規模な水力発電の建設事業
石油・ガス開発事業

ステークホルダーとのエンゲージメント強化

当社グループでは、お客様の脱炭素への移行を金融面で支援するため、発行体や投資家をはじめとするステークホルダーの皆様とのエンゲージメント(建設的な対話)を強化し、これらを通じて、リスク管理の強化につなげています。また、前述の「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」を基に、環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に対してリスクを認識した上で、投融資先等とのエンゲージメント等を通じた適切な対応に取り組んでいます。

(参考)大和アセットマネジメントにおけるエンゲージメント活動

大和アセットマネジメントでは、従前より投資先企業に求めるESGの重要課題(マテリアリティ)を開示しており、その中で気候変動も掲げています。投資先企業とのエンゲージメント活動の一環として、環境負荷の軽減が課題である企業に対し、問題点の共有および、環境経営の推進、情報開示の改善といった解決策に関する議論を行い、リスクの低減を目指しています。投資先企業のGHG排出量等主要指標の分析やシナリオ分析を行うことで、気候関連のリスクと機会を把握し、エンゲージメントに活用しています。2021年は、1,230社とエンゲージメントを実施し、ESGに関するエンゲージメントのうち約20%が、気候変動に関するものでした。