金融・資本市場の維持発展のために

大和証券グループの主要事業である証券ビジネスは、金融・資本市場を介して、有価証券の発行による資金の調達ニーズと投資家の運用ニーズを結びつけ、円滑なお金の流れをつくり出す、社会・経済の重要なインフラストラクチャーです。これを維持発展させることは、まさに当社グループマテリアリティの「金融」でも掲げている「健全な金融・資本市場を発展させ次の世代につなげる」ことであり、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の実現に向けた当社グループの大きな使命と考えています。

市場機能維持のための取組み

決済機能の役割と重要性

金融商品取引において、買い手と売り手の双方と、株式や債券等の証券や資金の受渡しを行なう決済は、当社グループの業務の要です。社会インフラでもある決済機能では、安全性と信頼性、そして利便性が重要です。必要なときに、確実に換金可能な、安全で信頼できるマーケットだからこそ、世界中から投資資金が集まり、企業等の資金需要者も資金調達が可能となるのです。

決済の処理件数

  • 毎日:平均1万件
  • 年間:約260万件(国内外の機関投資家によるお取引)

証券会社としての責任

2020年3月、大和証券は有力同業他社に先駆け、全社員を対象に本格的なテレワークを導入しました。ソフトとしての在宅勤務制度は当社を含めて既に多くの会社で導入済みですが、全社員1万人への2in1端末※1配備というハードの整備と合わせて新設した大和証券のテレワーク制度は、フロント部門からバック部門まで全ての社員がどこにいても出社した場合とほぼ同等の業務を行なうことができるようにした画期的なものです。これは、コロナ禍であっても決して止めるわけにはいかない決済業務において、「社員の感染リスク軽減」と「証券会社としての社会的責任の遂行」の両立を図るにあたり、その実力が遺憾なく発揮されました。証券決済が滞るような事態を発生させれば、その影響は当社だけに留まらず、マーケット全体の信用失墜につながり、ひいては世界経済へ重大な影響を及ぼす可能性すらあります。決済を当然のように正確かつ迅速に履行することこそが、社会インフラとしてマーケットを機能させ、経済発展を実現する原動力となると考え、円滑な業務遂行態勢の構築に努めています。
コンピューターを駆使した高頻度取引を行なう投資家が現れるなど、膨大な量の取引を確実に決済するため、処理能力が高く、信頼のおけるシステムを整備しています。しかし、いくらシステム化が進んだとしても、決済業務においてもっとも重要なのは、今なお人材だと考えています。イレギュラーな事象が発生した際、スピーディーに状況を把握し的確に対応するには幅広い知識が求められることから、日々の業務を通じて得られた経験・ノウハウを可視化・蓄積するとともに、業務を横断した研修と業務ローテーションを継続して実施することにより、個々人の業務知識・カバー範囲を広げるよう努めています。
一方で、日本の金融・資本市場の競争力を強化するには、一層の利便性向上とリスク管理強化が必要との認識から、業界全体で決済期間の短縮化を進めてきました。大和証券は、日本証券業協会が設置したワーキンググループで中心的な役割を担い、決済期間短縮化に向け、さまざまな課題の整理・検討を行なってきました。すでに2018年5月には国債のT+1決済が、2019年7月には株式のT+2決済が始まりました。
また、クロスボーダーで行なわれる外国為替取引では、通貨により決済時間が異なることに起因する決済リスク(たとえば、日本時間で円を支払ったにもかかわらず、米国時間でドルを受け取ることができないリスク)が懸念されますが、大和証券は国内証券会社として唯一、決済メンバーとしてCLS決済※2に直接参加しています。外国為替取引の決済リスクを軽減することで、金融市場の安定に向け一層の責任を果たしていきます。
新感染症の流行や自然災害、テロなどの不測の事態に対しては、いかなる状況であろうとも決済業務を継続させる決意のもと、事業継続計画(BCP)を策定し、定期的に訓練を実施し備えています。
決済の信頼性は、お客様の信頼を維持するために極めて重要です。今後も、信頼できる決済インフラと人材を支えに、高度化するお客様のニーズに応え、スピーディーにソリューションを提供していきます。

  1. ※1 社内ではデスクトップPCとして、社外ではノートPCやタブレットとして使用可能なモバイル端末
  2. ※2Continuous Linked Settlement(多通貨同時決済)
金融・資本市場における証券会社の役割

証券業務におけるブロックチェーン/分散型台帳技術の適用検討

大和証券と大和総研が主体となり、証券約定照合業務におけるブロックチェーン/分散型台帳技術(DLT)の適用検討プロジェクト第2フェーズを、機関投資家、金融機関およびシステム会社の26社と共同で実施しました。
日本取引所グループによる業界連携の枠組みを活用して行なわれた本プロジェクトでは、第1フェーズ(2017年)で約定照合業務へのDLT適用の有用性が確認されたことを受け、第2フェーズ(2018年9月~2019年1月)では、同業務におけるデータ項目や業務プロセスの標準化、DLT基盤の運用方針などについて議論し、業界としてのコンセンサス形成を目指して、より現実的なシステム構築に向けた構想をとりまとめました。プロジェクトの成果は、2019年2月にワーキング・ペーパーとして公表しています。
大和証券グループは、本プロジェクトの取組みが、国内証券市場全体でのコスト低減や利便性向上につながり、最終的には投資家の利益に資すると期待しています。今後も、お客様に有益なサービスを提供すべく、本構想の実現に向けて取り組んでいきます。

  • 証券会社と機関投資家との間で、証券の売買成立後に数量や手数料などを確認し合う業務

市場機能発展のための取組み

ミャンマーでのプライベート・エクイティ投資

大和PIパートナーズでは、ミャンマーの経済開放・規制緩和の流れに沿った会社法・投資法等の法令改正の動きを受けて、ミャンマーでのプライベート・エクイティ投資の検討を2016年より本格化させ、これまでに合計5件の出資を行ないました。また、2019年にはDAIWA Myanmar Growth Fundを立ち上げました。出資先企業のうち、マイクロファイナンス事業を行なうドゥ・マイクロファイナンス社は、貧困層や女性にも事業資金を提供することにより、経済の発展と人々の生活水準の向上に寄与しています。大手インターネット・サービス・プロバイダーであるフロンティア社は、安定したインターネットへのアクセスをミャンマーの人々に安価で提供しています。個人を対象にバイクのレンタルサービス等を提供するレント・トゥ・オウン社は、生活に欠かせない交通手段を提供し、人々の生活水準の向上に寄与しています。ファッション・アパレル商品を中心に取り扱うオンラインマーケットプレイスを運営するRGO社は、ミャンマーの幅広い地域の消費者にさまざまな商品を提供することで、人々の利便性と生活水準の向上に寄与しています。
新たな経済発展の緒についたばかりのミャンマーには、数多くの成長性を秘めた新興企業が存在しており、引き続きこれらの企業に資本を提供していくことで成長を促進し、ミャンマーの社会インフラ・生活水準の向上に資することができると考えています。

ミャンマー中小企業/農業・農村開発ツーステップローン事業

大和総研は、SDGsのターゲットにも挙げられる金融サービスにおけるインクルージョンへの貢献の一環として、株式会社日本経済研究所、株式会社三祐コンサルタンツと協力し、日本政府による対ミャンマー円借款事業「ミャンマー国 農業・農村開発ツーステップローン事業」(通称:農業TSL)および「ミャンマー国 中小企業金融強化事業」(通称:中小TSL)に、2012年以来8年の長きにわたって参画しています。
農業TSLは、ミャンマー農業の機械化を進める目的で、国営ミャンマー農業開発銀行(MADB)に対し、大型農機の購入に適した長期・低利融資の実務能力向上のための支援を行なうものです。全国200店超のMADB支店網に向けて、現地訪問による直接の実務研修を実施するほか、同銀行の業務効率化や設備近代化を進めるための提言を行なっています。
中小TSLは、中小企業の設備投資資金へのアクセス改善を目的としたもので、低担保融資枠や日本企業と取引のある企業向けの融資枠を設けています。民間銀行7行を通じた融資を管理するミャンマー経済銀行(MEB)に対して、銀行業務全般の技術支援を行なっています。
これら2事業の中心的な役割を果たすことで、大和総研はミャンマー政府および民間企業の厚い信頼を獲得し、ミャンマーにおける存在感をますます高めています。両事業はミャンマー国の経済発展に資するものであり、大和総研では、今後もこのようなSDGsの実現に資する事業に取り組んでいきたいと考えています。

ベトナム株式市場発展に向けた支援

大和総研は、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの委託を受けて、2019年3月よりベトナムの株式市場発展を支援するため「ベトナム株式市場の公正性及び透明性改善に向けた能力向上プロジェクト」に取り組んでいます。このプロジェクトは、ベトナム政府が2012年3月に発布した首相決定「2011 年から2020 年にかけての証券市場開発戦略」の一環として、日本政府が受けた要請に基づいて実施される大型案件で、大和総研を主体としてJPXグループなどを含む総勢12名のコンサルタントチームで3年間にわたり実施されるものです。具体的には、証券市場の監督当局である国家証券委員会(SSC)や、ホーチミン証券取引所(HOSE)、ハノイ証券取引所(HNX)に対し、国際水準の公正性・透明性及び効率性を目標とした知識の提供、実務能力向上のためのトレーニング、実務マニュアルの作成などの支援を行ないます。ベトナムでは、2019年11月に新証券法が成立(施行は2021年1月)し、証券市場の改革が一層推進されることが期待され、プロジェクトの重要性はさらに高まったといえます。

本プロジェクトに期待される具体的な成果は以下の4点です:

  1. 1.証券当局および取引所における検査を含めた市場監視能力の強化
  2. 2.証券当局および取引所における証券会社等の市場仲介者への監督能力の強化
  3. 3.株式上場および株式公募の運営能力の強化
  4. 4.上場企業等の経営層レベルにおける投資家保護にかかわる責任意識の向上

本プロジェクトの実施によりベトナム株式市場の透明性と公正性が向上することは、金融資本市場を通じたベトナム社会の豊かさの実現に寄与することであり、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献をしていく活動と位置付けられます。また、本プロジェクトを通じて大和証券グループのベトナム金融資本市場へのかかわりを深めることは、中長期的に大和証券グループのベトナムおよびアジア関連事業の発展にも寄与するものと期待されます。
大和総研は、株式市場の育成支援を通じてアジア地域などの新興国の経済発展に貢献する活動に引き続き積極的に取り組んでいきたいと考えています。