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対話で考えるCSR | 情報発信

第26回:「非人道兵器とSRI」 2010年6月8日

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悲劇をなくすために市民がつくった条約

<写真>目加田氏

河口:
オスロ条約実現への道のり「オスロ・プロセス」についてお話を伺えますか。

目加田氏:
クラスター爆弾の禁止を強く求めたのは、現場で除去作業を行なっているNGOや被害者の支援にあたっているNGOでした。爆弾を除去しても使われて、除去してもまた使われて……。このままではいつまで経っても被害者はなくならない。問題を根本的に解決しなくては、と訴えて、政府を動かしたのです。
ノルウェー政府など複数の諸国とNGOが協力して2007年に始まった条約づくりのことを「オスロ・プロセス」と呼んでいます。2008年12月に調印し、2010年8月1日に発効が決まりました。

NGOは市民の声を代弁して政府を動かしてきたわけですから、オスロ条約は市民が政府とともにつくった条約ともいえますね。
1997年にカナダ政府等とNGOが中心となって成立した、オタワ条約(対人地雷禁止条約)と似た取り組みだとも言えます。オタワ条約の実現に貢献したICBL(地雷禁止国際キャンペーン)(*4)は、1997年 にノーベル平和賞を受賞しています。

(*4)ICBL(地雷禁止国際キャンペーン):International Campaign to Ban Landmines.対人地雷の廃止を目的に結成された、世界各地のNGOの連合体。

我々JCBL(地雷廃絶日本キャンペーン)(*5)は、1997年にICBLのメンバーになりました。
オスロ・オタワの両条約とも、NGOや現場で支援を行なってきた人たちの協力なしには実現しなかったでしょう。NGOが持っている被害に関する詳細なデータ、除去作業のスキル、知識、経験などが条約づくりに必要不可欠だったからです。

(*5)JCBL(地雷廃絶日本キャンペーン):Japan Campaign to Ban Landmines.対人地雷及びクラスター爆弾廃止のために活動するネットワークNGO。

日本政府の条約批准は対話から始まった

河口:
米国、中国、ロシアはオスロ条約に参加していない中、対米追従と批判されがちな日本政府が積極的に批准(*6)したことは評価に値しますね。なぜなんでしょう?

(*6)批准:国の代表が署名した条約について、当事国が最終的な確認・同意を行なう手続き。

目加田氏:
当初、日本政府は「オスロ・プロセス」に乗り気ではありませんでした。そこで我々JCBLは政府に働きかけました。実現への手段は、官僚や政治家の方々との対話でした。クラスター爆弾の非人道性や深刻な被害の実情を伝え、禁止条約に参加してほしいと訴えたのです。結果、反対する理由はないと政治的に判断され、条約に署名・批准したのです。

日本の金融機関の対応は消極的

<写真>目加田氏・河口

河口:
オスロ条約には、クラスター爆弾製造企業への投融資を禁止すると解釈できる条項が盛り込まれています。昨年、NGOが、金融機関とクラスター爆弾の関係について報告書を公開していますね。その中で韓国は米国7社が製造企業とされ、世界の金融機関との関係が報告されています。それを元に、JCBLでも日本の金融機関と対話されているようですが。

目加田氏:
なかなか厳しいですね。日本の金融機関は情報公開に消極的ですし、どういう方針で臨むのかという説明責任も果たされていません。現時点で問題視されているクラスター爆弾製造企業は、世界でたった7社です。運用先として外すことはそれほど困難なことなのでしょうか。

河口:
報告書では、韓国や米国の7社がクラスター爆弾製造企業とされています。
投資運用の立場からすると、クラスター爆弾製造企業がすでに投資信託に組み込まれている場合、これを外すことは、恣意的な運用ということで「投資信託及び投資法人に関する法律」に抵触する可能性があります。また、基本的に運用者は制約を嫌います。パフォーマンス最大化の観点から特定の銘柄が最初から投資できないという制約はできるだけ排除したいのです。さらにルールの拡大適用を懸念する声があるようです。現在の7社以外に部品製造業者も投融資禁止の対象になりはしないかと。提出された資料が正しいか調査をする必要もありますから、保守的な動きになるのだと思います。でも、クラスター爆弾の問題についてきちんと理解してもらうと、排除に反対する金融関係者は少ないですね。

目加田氏:
ハードルが高いことはわかります。しかし、すぐに取引をやめることができなくとも、まずは明確なポリシーを打ち出すことが大切なのではないでしょうか。
オランダ、スウェーデン、ノルウェーなどの国々では14の金融機関がすでにクラスター爆弾製造企業との取引を一切禁止しました。カナダ、デンマーク、フランス、英国などの13機関では段階的な取引停止を検討しています。

自分たちのお金を非人道的行為に加担させない

河口:
欧米ではSRI(*7)への意識が高まっています。SRIの社会的・環境的基準にはいろいろありますが、特にオランダや北欧では、非人道的兵器製造会社に年金基金が投資することに社会的批判が集まり、欧州の特に公的年金では、地雷やクラスター爆弾企業には投資しないのが、当たり前になっています。そのための基準を定める時代がすでにきています。ところが日本では、SRIの普及そのものが遅れています。

(*7)SRI:Socially Responsible Investmentの略で、社会的責任投資のこと。財務評価に加え、社会的責任(倫理、社会、環境への取り組みなど)を考慮して行なう投資のこと。

目加田氏:
はい。ただ、今後、日本がSRIの流れに逆行するとは思えません。国際的なSRI推進の流れは不可逆的でしょうし、これからは日本の金融機関もSRIを考慮せざるを得なくなってくるのではないでしょうか。同時に、私たち預金者も意識を高めなくてはなりません。何気なく預けている預金が間接的にでも非人道的行為に加担していると知ったら、預金を引き出す、投資をやめるといった決断をする必要もあるでしょう日本国内でも、そういった価値観を育てていく必要があると思います。

河口:
少しずつ変えていかなくてはいけませんね。個人としても、金融機関としても。

目加田氏:
そう思います。以前、セルビアから被害者の方をお招きしました。その方はクラスター爆弾を除去しようとして、爆発で両手両足を失いました。爆弾処理の高度な訓練を受けていても、除去は難しい。今この瞬間も、罪のない人びとや子どもたち、除去活動を行なう人々が被害にあっているかもしれません。それでもクラスター爆弾を持ち続けるのか?クラスター爆弾を製造している企業に投融資するのか?先ずは、この問題を広く知っていただき、多くの方々に考えて頂く必要があると思います。

河口:
こうした現実を知ること、伝えること、お金の使い道を考えることが、社会を変えることにつながります。金融機関としては、NGOやお客様との対話を通して、新しい未来への道をつくっていけたらと思います。本日は、大変考えさせられるお話をありがとうございました。

※大和証券投資信託委託ではクラスター爆弾に関する方針を策定しています。
「クラスター爆弾製造企業への投資その他の取扱いについて」

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