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第21回:「CSRとマイクロファイナンス その2」2009年12月14日

<写真>功能 聡子氏

功能聡子氏
ARUN代表
国際基督教大学卒。ロンドン政治経済大学院(LSE)社会政策学部修士課程修了。民間企業、アジア学院勤務の後、1995年よりカンボジアの復興・開発支援に携わる。2009年2月、日本発の途上国向け社会的投資の仕組みを作るため、Social Investment Fund for Cambodiaを設立。同年12月ARUN(ARUN合同会社)設立。

<写真>慎 泰俊氏

慎 泰俊氏
Living in Peace代表
1981年東京生まれ。朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒、早稲田大学修士(ファイナンス)。現在、米系金融機関にて、財務モデルの作成・分析等に従事。『貧困の終焉』に触発され、2007年10月28日にLiving in Peaceを設立。

自立の意思と人口密度が、マイクロファイナンスを成功へ導く

<写真>功能氏

河口:
お2人はソーシャルアントレプレナー(*1)として、カンボジアでマイクロファイナンスに取り組んでいらっしゃいます。なぜ、カンボジアを選ばれたのでしょう。経緯をお話しいただけますか。

(*1)ソーシャルアントレプレナー:社会起業家、チェンジメーカーともいう。社会問題を事業によって解決しようとする人のこと。

功能氏:
1995年から2005年までの10年間、私はカンボジアに住み、NGOやJICA(*2)の一員として開発協力を行なっていました。しかし、ただ援助すればいいというものではなく、支援とはどうあるべきかについて悩み、外国人が援助を行なうことの限界を感じるようになりました。

カンボジアに住み始めた当初は、「カンボジアではうまくいかない」と後ろ向きになる人が多く、人々の表情も暗かったのですが、それが次第に変わっていきました。「自分たちがこの国をつくっていくんだ」「自立したい」「外国人に指示されて働くのではなく、自分たちの力でビジネスを行ないたい」と。
実現するためには、事業を行なう資金が必要でした。彼らの自立を手伝いたいという思いから、私は日本で投資を募る方法を考えました。同じ志を持った人たちと出会い、2009年2月に任意組合として活動を始めました。

(*2)JICA:「国際協力機構」の通称。開発途上国への技術協力及び支援を行なう独立行政法人。

河口:
カンボジアのなかから生まれた需要とビジネスプランだったのですね。
慎さんがマイクロファイナンスに関わる活動を本格的に始められたのは?

慎氏:
2008年の12月からです。マイクロファイナンスの第一弾は、失敗すると、後の道が閉ざされるおそれもあるので、最も成功確率が高い国を選ぶ必要がありました。
候補国の中から「アジアにある」「貧しい国」「金融関係の規制がしっかりしている」という理由でカンボジアを選びました。金融関係の規制がよくできていることは、悲しい歴史の裏返しです。ポル・ポト政権下で、カンボジアの金融関係の規制はほとんど白紙になってしまったために、ドナーの支援を受けて、世界でも最も優れた金融規制をつくることができたんです。

河口:
候補をアジアに絞ったのは?

慎氏:
世界中に広がっているマイクロファイナンスですが、実は成功しやすい国、成功しにくい国があるんです。アジアのように人口密度が高い国は成功しやすい。マイクロファイナンスに欠かせない、相互モニタリングの仕組みが有効に働くからです。

河口:
人口密度が低いと、お互いはなれて暮らしているし、近隣の行動がわかりませんものね。そういえば、マイクロファイナンスの成功で注目を集めるバングラデシュも人口密度が高い国です。

カンボジアの農業拡大には、段階的な資金投入が必要

<写真>慎氏

河口:
お2人のスタートは対照的ですね。功能さんは、カンボジアからマイクロファイナンスへ。慎さんは、マイクロファイナンスからカンボジアへ。
功能さんが代表を務めるARUNは事業体への投資、慎さんが代表を務めるLiving in Peaceは個人が対象と、支援先も違います。

功能氏:
ARUNの投資先は、カンボジアの農民を組織化したNGOで、現在はそのビジネス部門を独立させ、商業法人化しています。個人ではなく事業体に投資することで、カンボジアの社会発展を支援したいと考えています。

少し農業の話をしますと、カンボジアでは国民の7割が農民で、その多くが稲作に従事しています。2000年、農薬や化学肥料に頼るのではなく、田植えと水管理の工夫によって生産性を上げる、SRI農法が導入されました。SRI農法の特徴は、たとえば、田んぼを湛水するのをやめ、適切な湿度で稲を栽培する。田植えの際には播種後10日前後の苗を株間をあけて1本ずつ植える。カンボジアの人たちにとっては大きなイノベーションで、導入後、収穫量が2−3倍増加し、収入も増えました。

河口:
自給のために生産していた農民たちに、余剰を売ってビジネスを行なう余裕ができたということですね。

功能氏:
はい。ところが農民1人では、仲買人に安く買い叩かれてしまいます。そこで、組織化し、農業組合のような団体をつくりました。
それでも、資金力のあるタイやベトナムのバイヤーに安く買われ、海外で精米されて第三国へ輸出されたり、カンボジア国内に戻ってくるということが起きています。

河口:
農民は安い金額で売った米を、結局、精米するための資本がないために高い金額で買い戻すのですか。流通や貿易のシステムが未整備なのが問題ですね。

功能氏:
そこで私たちは、フェアな流通システムを作ろうとしている事業体に投資を行ないました。彼らの今年度の目標は、3000トンの米を買い取り、国内で販売するとともに輸出も行うことです。すでに、欧米やマレーシアの会社と輸出契約を結んでいます。

河口:
カンボジア社会に与えるインパクトは大きいですね。
お話をうかがうと、最初に資金ありきではなく、まずは農業があり、技術の導入と生産の向上があり、次の段階で資金が必要になった。マイクロファイナンスは、ただ資金を投入すれば成功すると安易に考えられることもあるようですが、そうではありませんよね。

功能氏:
そのとおりです。イノベーションの段階、組織化の段階、流通を拡大する段階など、資金が必要となる段階ごとに、適正規模の資金を投入する。その見極めが重要だと思います。

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