


浅井茂利氏
全日本金属産業労働組合協議会
政策局部長
全日本金属産業労働組合協議会(金属労協:IMF-JC)は、日本の金属産業の5つの産業別労働組合(電機連合、自動車総連、JAM、基幹労連、全電線)で構成される労働組合組織。「海外事業展開に際しての労働・雇用に関する企業行動規範」を個別企業労使で締結する取り組みを積極的に展開している。

河口:
今日は労働組合とCSRということでお話を伺いたいと思っています。最近の日本経済新聞の夕刊に出た記事を拝見して、連合が男女雇用機会均等法改正案を提供していること(*1)を知り、資料を送っていただいたのですが、労働者というステークホルダーに対するCSRについて、非常に重要なことをやっていると再認識しました。
(*1)第43回中央委員会/2004.10.6『連合男女雇用機会均等法改正要求』
詳しくはこちら (33KB)
浅井氏:
労働組合の活動はCSRの追求そのものだと思います。ただ、最近のCSRに関する流れのなかで、労働者に対するCSRだけでなく、CSR全体に対して発言していくことが必要なのではないか、という議論が出てきました。これまでは労使協議の範囲の中に入っていなかった問題でも、CSRの議論のなかでは、関与していかざるを得ないのではないでしょうか。
河口:
労働者の立場としてだけではなく企業の重要なステークホルダーとして意見を言っていこう、ということですね。
浅井氏:
そうですね。もちろん労働者の立場からのCSRが主なテーマではありますが、それだけではないということです。CSRを追求することが企業の利益にもなります。かたやコンプライアンスや企業倫理の問題で失敗をすれば、雇用にも影響が出てくる。大きく見れば、CSR全体にかかわっていくことが、回りまわって労働者の利益にもなるのです。

河口:
実際の企業の取組みはどうですか。IMF-JCによるアンケート調査の結果(*2)を拝見して、日本企業はCSRに対してまだなかなか積極的に取り組めていないという印象を受けましたが・・・。
(*2)「企業の社会的責任(CSR)」に関する社内体制づくりについてのアンケート集計結果。
ウェブサイトはこちら。
浅井氏:
IMF-JCの傘下に、3600ぐらいの企業の労働組合があります。今回の調査は、そのうち65社、つまりごく一部の大企業のみを対象としたものでした。調査の結果、企業行動指針やコンプライアンス委員会などの、CSRに関する基本的な枠組みは整備されていることがわかりました。ただ、教育やモニタリングの体制が未整備だったり、企業行動指針に入れるべきものがまだ入っていなかったりする企業が多いこともわかりました。
一方、CSRに関する労働組合の参画について言えば、まだまだこれからということのようです。労働組合が企業行動指針の作成に関与したり、コンプライアンス委員会に参加したりすることが必要であると考えています。
私どもでは「中核的労働基準に関する企業行動規範を労使締結しよう」という活動に取り組んでいます。この取組みについては欧州の労働組合を中心にして、具体的な成功例が出てきており、私どももそれに続いていきたいと思っています。そして、それと平行して、労働組合がCSR全般に関わっていくことが重要だと考えています。

河口:
そもそも労働問題を考えるうえでの国際社会における基本は4つの中核的労働基準、つまり、団結権・団体交渉権の保証(結社の自由)、児童労働の不使用、強制労働の不使用、差別の撤廃なんですね。
浅井氏:
この問題に関しては、CSRがブームになる前の97年から取組みを続けています。IMF(国際金属労連)の傘下では、10の多国籍企業において労使間で中核的労働基準に関する企業行動規範を締結しています。残念ながら日本ではまだ実現していないのですが……。
河口:
日本ではこの中核的労働基準に関する企業行動規範はどの企業も締結していないのですか?
浅井氏:
そうですね。企業別組合と経営者との間で交渉をしている段階です。私どもの組織外では家電販売会社で締結している例があります。
河口:
中核的労働基準はその言葉をみると当たり前のことのように思えます。当然みんなが結んでいると思っていたのですが、違うのですね。
浅井氏:
労使締結でない、企業として発表した「企業の行動指針」の中に盛り込まれているというのはあります。日本でもグローバルコンパクト(*3)に参加している企業は、中核的労働基準を認めていることになります。また、アメリカ企業に多いのですが、グローバルサリバン原則(*4)に参加していれば中核的労働基準を認めていることになります。
ただし、労使で締結した企業となると、金属産業では世界で10社に留まります。
グローバルコンパクトに参加していなくとも、企業行動指針に「グローバルコンパクトを尊重し」「ILOの基本原則に則り」などという文言を入れている企業もありますが、労使締結にはいたっていません。
(*3)グローバル・コンパクト:1999年1月、世界経済フォーラムにおいてコフィー・アナン国連事務総長が提唱した国際的なイニシアティブ。参加する世界各国の企業に対して、人権、労働、環境、腐敗防止の分野における普遍的な10原則を支持、実践することを求めている。ウェブサイトはこちら。
(*4)グローバル・サリバン原則:1999年に発表された人権に関する国際的な企業行動原則。南アフリカでのアパルトヘイトに対抗するため1977年に故レオン・サリバン牧師が提唱した「サリバン原則」を拡張したもの。ウェブサイトはこちら。